田部康喜のTV読本

2018年10月19日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 戸田恵梨香とムロツヨシの恋愛ドラマ、TBS「大恋愛」(金曜日よる10時)はヒットメーカーの大石静の脚本を得て、ドラマ史に残りそうである。今季ドラマのなかで最も高い水準のドラマのひとつである。

(ninitta/iStock/Getty Images Plus)

「劇中小説」を使った巧みな脚本

 ドラマは、2013年5月に始まる。「砂にまみれたアンジェリカ」の題名の小説でかつては賞を獲得しながら、書けなくなって引っ越し会社に勤める、間宮真司(ムロツヨシ)と、医師の井原侑市(松岡昌宏)と結婚を控えた女医の北澤尚(きたざわ・なお、戸田恵梨香)が、尚の引っ越し作業を通じて知り合う。「砂にまみれた……」を暗記するほど愛読していた尚だったが、真司が作者であることに気づかなかった。

 タイトルの「僕を忘れる君」が表しているように、尚(戸田)は若年性痴ほう症の症状が現れはじめている。そして、婚約者の井原(松岡)はワシントンの研究機関でこの病気を研究している権威である。

 第1回(10月12日)からドラマは、真司(ムロ)の語りによって進行する。そして、このセリフは、真司が尚と出会ったことによって、創作活動を開始した小説の一節であることがわかってくる。

 冒頭のシーンから、尚は用事をこなすために走る、走る。

 <彼女はあのころからいつも急いでいた。まるで何かに追われるように。いつも、いつも走っていた。まるで何かに追われるように。いつも、いつも、走っていた>

 劇中劇ならぬ劇中小説によって、真司の尚に対する愛の深さが語られていく。大石静の脚本の巧みな進行である。

 そして、真司と尚のあいだに交わされる美しいセリフの数々は、過去の恋愛ドラマの数々と同様に記憶に残り、思い出されることだろう。

 引っ越しで使った段ボールを回収にきた真司は、マンションの階上からの水漏れにあわてていた尚を助けて水漏れを止める。そのお礼にと尚は真司を食事に誘ったことがきっかけとなって、ふたりの出会いは増えていく。一度は、尚がすっぽかされた形で、居酒屋でひとり食事をして店の外にでると、真司が待っている。

関連記事

新着記事

»もっと見る