中東を読み解く

2018年10月22日

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 反政府サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害疑惑事件で、トルコ政府は10月23日、捜査結果を発表する。エルドアン大統領はこれまでの沈黙を破り「正義を追及し、すべての事実を明らかにする」と宣言、サウジと真っ向から対決する姿勢を打ち出した。サウジの苦境は一段と深まる見通しだ。

トルコ・イスタンブールのサウジアラビア領事館前に待機する報道陣(Abaca/AFLO)

総スカン食ったサウジ

 サウジがカショギ氏の死亡を初めて認めた20日の発表は世界中から非難を浴びた。「口論と格闘の末死亡」という“作文”は合理性と説得性に欠け、サウジを擁護してきたトランプ米大統領も「明らかにごまかしや嘘がある」と発言したほどだ。

 疑問点をざっと挙げただけでもその杜撰さが分かる。サウジ側が言うようにカショギ氏を帰国させるための話し合いであるなら、なぜ15人もの人間が本国からイスタンブールの領事館まで出向かなければならなかったのか。治安機関や軍関係者がその中に12人も含まれている上、遺体解剖の検視の専門家までいたのはなぜか。

 トルコ側がリークしているように、最初から同氏を殺害するために待ち伏せしていたのではないのか。当初、同氏がすぐに館外に出たと嘘の発表をしていたのはなぜか。カショギ氏の遺体はどこにあるのか。遺体は地元の協力者に引き渡されたというが、協力者とは誰のことなのか。

 そもそも発表が事件から2週間以上たってからだったのはなぜか。容疑者たちがどこに拘束され、取り調べを受けているのか。これほど大掛かりな対外作戦を事実上の支配者であるムハンマド皇太子が知らなかったなどということはあり得るのか。

 サウジとしては、次期国王で、王国の改革を推進する皇太子をなんとしても守るための苦肉の発表だったろう。だが、数々の疑問が残る不可解極まりない発表に国際社会から総スカンを食ってしまった。英国、フランス、ドイツの3カ国外相は「殺害を正当化できるものは何もない。断固非難する」との声明を発表、ドイツのメルケル首相はサウジに武器売却はしないと断言した。

 与野党問わず米議会からも「全く信用できない」(コーカー上院外交委員長、共和党)、「サウジの駐米大使を即刻国外退去にすべきだ」(ダービン民主党上院議員)などの厳しい声が相次いだ。発表を「最初の大きな一歩。信用できる」としてきたトランプ大統領も「事件の全容が解明されるまで満足しない。明らかにごまかしや嘘がある」と不満を表明した。

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