海野素央の Love Trumps Hate

2018年11月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

トランプ大統領の熱狂的な支持者(筆者撮影@アリゾナ州メサ)

 今回のテーマは「なぜ民主党はトランプ大統領の岩盤支持層を切り崩せないのか」です。ドナルド・トランプ米大統領の支持率は、2017年1月の就任以来、低空飛行ですが実に安定しています。米政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、トランプ大統領の就任当初の支持率(17年1月29日)は43.8%でした。今回の中間選挙直前の支持率(18年11月2日)は44.1%で、ほとんど変化がありません。

 トランプ大統領の岩盤支持者は、なぜ減らないのでしょうか。その回答はトランプ集会にありました。9月及び10月に西部モンタナ州とアリゾナ州で、同大統領が共和党候補の応援演説を行うために開いた集会に参加しました。そこで本稿では、現地の様子を交えながらそのナゾを解きます。

赤い帽子

トランプ集会に登場したトランプグッズの店(筆者撮影@アリゾナ州メサ)

 確かに、トランプ大統領に熱狂的なトランプ信者は同大統領から逃げていきません。モンタナ州ミズ―ラ在住で開催された集会は18時半開始でしたが、筆者が午前8時前に会場に到着すると、すでに列ができていました。

 トランプ信者の一人でミズーラ在住のジニー・ジョセリンさんは、「7月にモンタナ州グレートフォールスで行われたトランプ集会に正午から並びましたが、入場できませんでした。今日は8時前に来ました」と語っていました。60代前半に見える白人女性のジニーさんは、開門時間が近付くとバックから「米国を再び偉大にする」という字句が入った赤い帽子を取り出して被りました。

 筆者は研究の一環として、オバマ及びクリントン陣営に参加し、多くの集会に足を運びましたが、陣営の帽子を被った支持者をほとんど見かけませんでした。一方、トランプ集会では赤い帽子を被った熱狂的な支持者が目につきます。つまり、民主党がトランプ大統領の岩盤支持層を切り崩せない第1の理由は、彼らが同大統領と心情的に一体化していることです。

フェイク(偽)ニュースの力

熱狂的な岩盤支持層(筆者撮影@モンタナ州ミズ―ラ)

 第2の理由は、岩盤支持層がトランプ大統領にとって不都合な報道をフェイクニュースとして片づけてしまうことです。例を挙げてみましょう。

 米政府高官と名乗る匿名人物が9月5日、トランプ大統領が政権内部で抵抗に遭っていると、米ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿しました。その寄稿文についてモンタナ州ビリングスのトランプ集会に参加した40代後半とみられる白人男性は、こう語っていました。

 「あの寄稿文は政府高官が書いていない。ニューヨークタイムズが書いたんだ。完全なフェイクニュース。まあ、寄稿文が話題になってもせいぜい一週間ぐらいだろう」

 彼は根拠を示さずにニューヨーク・タイムズ紙の自作自演だと断言し、寄稿文の内容をまったく信じていませんでした。これでは、岩盤支持者は減少しません。

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