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2018年12月7日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

(AdrianHancu/Gettyimages)

 ニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子氏が12月3日、日本記者クラブで「ジャーナリズムとAI 米国メディアの戦い」と題して講演した。その中で「トランプ氏が2015年に米国の大統領選挙に出馬表明してからメディアと政治をめぐる状況が一変、(メディアは)AI(人工知能に)に注目する動きが出ている。新聞やケーブルテレビのニュース番組の視聴率が上昇する一方で、トランプ大統領のメディア攻撃が繰り広げられ、メディアに対する『ダーティーウォー(汚い戦争)』が起きている」と指摘した。

 また、本物かどうか見分けがつかないAIを使ったディ-プフェイク(Deep Fake)が増えていることに対しては「常に批判的に考えて、疑ってかかることが重要だ」と強調、伝えるメディア側がテクノロジーを駆使した対策を練るべきだと述べた。

 津山 恵子(つやま・けいこ)氏 1988年に共同通信社に入社、2003年から06年までニューヨーク特派員、06年に退社、その後、米国の政治、メディア、教育事情などをフリージャーナリストとしてリポートしている(写真・日本記者クラブ提供)

 津山氏の主な講演内容は以下の通り。

テレビは「トランプ景気」

 いま米国にはテレビ業界で「トランプ景気」が起きている。ケーブルテレビのニュース番組の視聴率が上昇、新聞社の有料デジタル購読者数が急増している。ニューヨークタイムズで見ると、2011年にデジタル版を有料化してから15年に100万人を超え、その後も順調に伸びて、18年の第3四半期現在、254万人に増えている。デジタル版の購読料金は1カ月16ドル(約1800円)で、私も購読している。

 トランプ大統領が「メディアを一方的に攻撃し、ジャーナリストは『国民の敵』だ」と何回も言うようになり、最高裁判事の候補のカバノー氏の学生時代の女性暴行問題の公聴会(9月27日)は、2000万人がテレビで見た。このほかFBI長官が「Fired」(首)になるなど、視聴者にとって「役者揃い」となったため、テレビの視聴率が上昇した。視聴者数が最も多いのがトランプ大統領寄りの報道をしているフォックスニュースで、プライムタイムの視聴者数が720万人、次に多いのがリベラル派のMSNBCの320万人、3番目が日本で馴染みのあるCNNで190万人。

圧倒的なフォロワー数

 トランプ大統領のメディア攻撃に対して、ボストンにある老舗新聞社ボストン・グローブが8月16日に全米の報道機関に対して、社説を一斉に書くという呼び掛けをした。「大統領のやり方は報道の仕事を弱体化、非合法化し、危険にさらしさえする。計算され、一貫した方針を持つように見える初めての大統領だ」と指摘、トランプ政権のやり方がいかに危険かを1面トップの社説で訴えた。これに対して、ニューヨ-ク・タイムズをはじめ全米の450社の報道機関が同調したが、わずか1日だけにとどまった。

 一方、トランプ大統領のフォロワー数は約5600万人といわれ、その半数がロボットによるものだとも言われているが、そうだとしても2800万人が大統領のツイッターを見ていることになる。ツイート数は09年3月から3万9800件で、1日当たりのツイート数が11~12件ある。これまでの米国大統領でフォロワー数が最大だったオバマ前大統領でさえ800万人だったこと、ボストン・グローブによる1日の反論と比較して、トランプ大統領のツイート発信による国民への影響力の大きさは比べ物にならない。

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