Washington Files

2018年11月19日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 米民主党は、事前予想通り中間選挙で下院奪回に成功した。党内にはこれを機に、与党共和党への怨念を晴らすため、スキャンダル追及、弾劾含め一気にトランプ大統領を追い詰めるべきだとの過激な主張もある。だが、過剰反応すると、今度は2年後の大統領選挙と議会選挙で有権者から手痛いしっぺ返しを食うことにもなりかねない。

 中間選挙を終えた米上下両院は、年明けの1月3日から2021年1月3日までの会期で第116連邦議会をスタートさせる。注目は何と言っても、共和党から民主党に主客交代した下院の動向だ。

ナンシー・ペロシ議員(AP/AFLO)

 全米50州での下院選挙は18日現在、カリフォルニア州の一部地域を除き、すべて開票作業が終了、その結果、435全議席の内、民主党は前回までの194議席から現段階で37議席増の231議席となり、最終的には235議席にまで大幅増となるとみられている。すでに新連邦議会の開会を前に、民主党議員たちの間では、高揚感と同時に、トランプ政権に対する「議会の確固たる存在誇示」を求める空気が盛り上がりつつある。

 アメリカの主要メディアは早くも、民主党下院が今後重視する優先課題として、

  1. トランプ共和党政権の執政全般に対する監視体制(oversight)強化
  2. 大統領個人のスキャンダル、疑惑追及および究明
  3. 医療制度改革「オバマケア」の充実
  4. 貧富格差是正のための税制改革
  5. 環境保護政策の推進

 などを挙げている。このうち、民主党進歩派が、下院議長への復帰が有力視されるナンシー・ペロシ議員ら党幹部に強く求めているのが、ロシア疑惑を含むトランプ氏周辺の疑惑に対する徹底追及だ。

 とくに下院情報特別委員会次期委員長就任が予定されているアダム・シフ議員は、NBCテレビなどのインタビューを通じ「これまで当委員会は(共和党委員長の下で)ホワイトハウスのご機嫌伺いに終始してきたが、今後はロシア疑惑調査を一層強化していく」と言明、来年1月議会招集後、できるだけ早い機会にロシア疑惑に関連してスティーブ・バノン元トランプ選対本部長、大統領の長男トランプ・ジュニアら大統領周辺の重要人物の証人喚問や当該政府機関からの関連書類押収などを含め、調査に意欲的に取り組んでいく姿勢を明確に打ち出した。

 また、シフ議員は、これとは別に独自の捜査を進めているモラー特別検察官の作業に関連して、大統領が、早期幕引きを意図したセッションズ司法長官解任に続き検討しているとうわさされるモラー特別検察官解任の動きをけん制するため「ロシア疑惑の徹底捜査継続」を連邦議会の意思として早急にまとめる意向も示唆している。

 さらに若手民主党議員たちの間では、下院勝利を契機に「大統領弾劾」を最優先課題として取り組むべきだとの強硬意見も少なくない。

 こうした動きに対し、ペロシ女史は中間選挙直後のPBS放送とのインタビューで「弾劾を求める人たちに言っておくが、民主党下院がそれを実現させることに熱心だとは思えない」とくぎを刺した上「その前に、モラー特別検察官による捜査結果内容を見極める必要があり、弾劾について議論する際には、共和党のある程度の賛同を求めたい」との慎重な姿勢を示した。

 さらに弾劾の動きについては、同じ民主党で2020年大統領選出馬もうわさされるバイデン前副大統領も「目下のところ、弾劾に突き進む基盤が存在するとは思わない……むしろ、モラー特別検察官の捜査の成り行きを見守るべきだ」と語り、若手議員たちに自制を呼びかけた。

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