安保激変

2018年11月12日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

(写真:AP/アフロ)

 11月6日、アメリカでは中間選挙が行われた。現在、フロリダ州知事選及び上院選で票の再集計をすることが決まるなど、まだ結果が確定していない選挙区が数か所残っているが、基本的には連邦議会は下院で民主党が8年ぶりに多数党に返り咲く一方で、上院は共和党が多数党の地位を堅持する構図となり、2019年1月以降は「ねじれ議会」が生まれる結果となった。

判断が難しいトランプ政権の「中間試験」の成績

 新政権発足直後の中間選挙は、一般的に新政権への信任投票の意味合いが濃い選挙で、そのため、大統領が所属する政党にとっては向かい風の選挙になる場合が殆どだ。次の大統領選挙の結果が現在の政権にとっての「期末試験」だとすると、中間選挙はさながら「中間試験」のような意味を持つと言えるだろう。そのような視点で今回の中間選挙の結果を見ると、選挙結果をどのように評価するかは難しい。冒頭で紹介したとおり、上院と下院では選挙結果が真っ二つに分かれたからだ。

 そもそも、2017年1月に発足して以来、トランプ政権は、一貫して不支持率が支持率を上回る状態が続いている。失業率が下がり、株価もおおむね上昇を続けており、経済指標だけ取って見れば非常に良い状態であるにも拘わらず、だ。選挙前には、常に安定した選挙予想・政治分析をすることで知られているチャーリー・クック氏をはじめとする複数の政治評論家が「これだけ経済指標がいいのに、これだけ不人気な大統領も珍しい」とコメントしていたほどだ。

 下院の選挙結果は、このトランプ大統領の不人気に大きく影響を受けた結果と言えるだろう。選挙結果を詳しく見ていくと、バージニア、テキサス、イリノイなどの州では、大都市に近い郊外の選挙区で、トランプ大統領の言動に失望した有権者が現職共和党ではなく民主党に投票する例が相次ぎ、この結果、20数名の共和党議員が落選した。特に、有色人種、女性、性的マイノリティなど、いわゆる「少数派」に対する蔑視・差別発言をトランプ大統領が頻繁に口にしたことの反動か、下院選では、過去最多の200名以上の女性が全米各地で立候補した。その結果、初のネイティブ・アメリカン女性議員、及び初のムスリム系女性議員も誕生した。

 一方、上院選は選挙戦終盤にトランプ大統領が集会を頻繁に開催、てこ入れを図ったことで、多数党の地位を共和党が死守する形となった。現職が有利とはいえ、小選挙区制で2年に一度改選されるため、その時々の有権者の間に存在する雰囲気に結果が大きく左右されやすい下院と異なり、任期6年、各州2人しか選出されない上院選は、選挙の年の雰囲気よりも、その時々の改選議席が民主党現職の席なのか、共和党現職の席なのか、またもともと、その改選が行われる州ではどのくらい民主、共和各党の支持があるのか、などの構造的な要因に左右される部分が大きい。このような上院選で共和党が多数党を維持したことは、トランプ大統領が一定の支持層の間では、いまだに確固たる支持を得ていることを浮き彫りにした。

 とは言え、下院で多数党の地位を民主党が8年ぶりに奪回したことで、トランプ政権は残りの任期の政権運営が一層厳しくなる、との見方が大勢を占めていることは事実だ。

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