西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年11月8日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

(写真:ロイター/アフロ)

 2018年のアメリカ中間選挙は、大方の予想通りの結果となった。

 連邦議会上院では共和党が多数を維持し、下院では民主党が多数を奪還した。上院は2年ごとに全100名のうちおよそ3分の1ずつ改選されるが、今回はその33選挙区に補欠選挙を加えた35選挙区で選挙が行われた。改選部分の大半の候補は6年前にオバマ元大統領が再選を果たした2012年選挙の当選組であり、改選35議席のうち民主党が26を占めていたので、いかに民主党が有利に選挙戦を展開したとしても民主党が多数を占めるのは困難とされていた。日本時間8日午前1時の時点で、ワシントンポスト紙によると、上院は合計で共和党が51議席、民主党は45議席で、共和党が多数を維持している(残りは未定)。他方、下院については453議席全てが改選され、共和党の引退議員が多かったこともあり、民主党の勝利が予想されていた。ワシントンポスト紙によれば、民主党が過半数を超える220議席を獲得し、共和党の獲得議席数は193である(残りは未定)。

 アメリカの連邦議会選挙は現職議員の再選率が9割を超える。だが、現職議員が引退した選挙区は争いが激化することがあり、今回の選挙では、そのような選挙区でどちらの政党が勝利するかに注目が集まっていた。それらの選挙区では、連邦議会の多数派をどちらの政党に握ってもらいたいかという判断に基づいて投票が行われる度合いが高くなる。議会で多数を握る政党は、政策決定で重要な役割を果たす委員会の委員長ポストを握ることができるため、政策過程に大きな影響を行使することができる。有権者は大統領の方針に賛同している場合には政権党に投票し、大統領に歯止めをかけてほしいと考える場合には非政権党に投票する。その意味で、中間選挙には大統領への中間評価という意味も込められている。

選挙が近づくにつれ、接戦の予想に

 中間選挙をめぐっては、これまでの歴史から導かれた経験則がいくつか存在する。だが、今回の中間選挙は、それらの経験則から一様の結果を導くのが困難だった。

 まず、新たに選出された大統領を擁する政党は、最初の中間選挙では議席を減らす傾向がある。また、現職大統領の支持率が低い場合も、政権党は議席を減らす傾向がある。ABCとワシントンポストの共同調査によれば、トランプ大統領は40%というトルーマン政権以後史上最低の支持率で最初の中間選挙を迎えている。これら二つの経験則は、民主党優位を予測していた。

 他方、経済状態が良好な時には政権党が有利になるという経験則もある。経済成長が続き、失業率が低い場合には、政権党の経済運営を継続させようという意思が働く。有権者の多くは景気を選挙における最重要争点にあげることが多く、今回の選挙に際しても各種世論調査で景気が最重要課題としてあげられていた。この結果は、今回の選挙が共和党に有利であることを示唆していた。また、不人気な戦争もないことも、共和党にとって好都合である。

 このように、過去の経験則から相矛盾する予測がなされた結果、今回の中間選挙の結果を予測するのには難しさが伴った。実際、中間選挙1カ月前には上下両院の多数を民主党がとるのではないかとの予測がなされていたが、選挙が近づくにつれ、接戦の予想がされるようになった。

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