中東を読み解く

2018年12月21日

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シリアに駐留する米軍(AFP/AFLO)

 トランプ大統領による米軍のシリア撤退発表は、米政府高官らも驚く突然の決定だった。その背景には、シリアをめぐって「大統領とエルドアン・トルコ大統領の思惑の一致」(ベイルート筋)という“裏取引”が浮かび上がってくる。マティス国防長官はトランプ氏に撤退を思いとどまらせようと最後の説得を試みたが失敗、抗議の辞任に踏み切った。長官の辞任は来年2月の予定。

反対押し切り独断で決定

 撤退の発表は唐突にツイッターで行うというまさに「トランプ流」だった。トランプ大統領は12月19日のツイッターで「イスラム国(IS)に歴史的な勝利を収めた。いまこそ米国の若者たちを帰国させる時だ」と宣言。この発表は米政府だけではなく、シリアに関与してきた中東各国やロシア、イラン、そして米国と組んでISを壊滅させた有志連合諸国を驚がくさせた。

 とりわけ、米国の求めに応じてIS壊滅に多くの血を流してきたシリアのクルド人の衝撃は大きかった。クルド人は将来のクルド人国家の実現を米国が後押ししてくれるという期待があるからこそ、IS攻撃の地上戦の主力を担った。それだけに「裏切られ、梯子を外された」(同)との怒りは強い。

 シリアについては、トランプ大統領は選挙公約で、IS壊滅後、早急に米部隊を撤退させると主張し、今年4月にも盛んに撤退論を繰り返した。しかし、マティス国防長官ら政権内の安全保障チームが強く反対、9月になって大統領はIS壊滅後も敵性国イランの影響力拡大を阻止するため、小規模の部隊をシリア領内に残すことに同意し、シリア政策を変更した。

 事実、大統領の信頼が厚いボルトン補佐官(国家安全保障担当)は当時、「イランの部隊が展開している限り、われわれが撤収することはない」と言明していたし、米政府のマクガーク有志連合代表もつい先週、ISを物理的に壊滅させても、われわれはこの地域の安定が維持されるまで留まる」と述べていた。

 政策が変わったのは大統領がツイッターで撤退を公表した前日の18日だ。ワシントン・ポスト紙などによると、この日、ホワイトハウスでごく少人数の秘密会議が開催された。出席者はトランプ大統領、ポンペオ国務長官、マティス国防長官、ボルトン大統領補佐官らだった。

 この席で大統領がシリアから部隊を撤退させたい意向を表明。これに対し、出席者のほとんどはIS掃討作戦がまだ完全には終わっていないこと、イランやロシアの影響力拡大を食い止める必要があること、米部隊が撤退すれば、混乱が生まれかねないことなどを主張して反対した。だが、大統領は反対論を強引に押し切った。

 シリアの米部隊は公式には503人だが、実際には4000人弱の規模と見られている。ほとんどが特殊部隊で、クルド人に訓練や武器援助し、ユーフラテス川の北東部に駐留。クルド人とともに、シリア全土の3分の1を支配下に置いている。トランプ大統領は30日以内に撤退するよう指示した、という。

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