中東を読み解く

2018年12月7日

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(Tim E White/Gettyimages)

 サウジアラビアの反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件は追及するトルコ側の手詰まり感が露呈される一方、疑惑の中心人物であるムハンマド皇太子は最近のG20サミットに出席するなど逃げ切りを図っている。殺害事件の背景にはサウド王家の凄まじい権力闘争があり、根は深い。

王宮内に盗聴器

 サウジ王室事情に精通するデービッド・イグナチオス氏が最近の米紙ワシントン・ポストで明らかにしたところなどによると、サウド王家の権力闘争は2つの強力な派閥の対立だ。一方はサルマン現国王と息子のムハンマド皇太子のサルマン一派であり、他方はアブドラ前国王派だ。

 対立が激化し始めたのはアブドラ前国王が死去した2015年1月。前国王は1年前から肺がんを患い、当時はリヤドのVIP病院で死の床にあった。前国王が死去した時、息子たちや侍従長らは権力を少しでも長く維持し、蓄えた一派の巨額な闇資金を隠すため、皇太子だったサルマン現国王にさえ嘘をつき、死去の事実を隠そうとした。

 この時のアブドラ一派の行動に激怒したサルマン氏は国王就任と同時にアブドラ派の排斥に着手。アブドラ前国王の息子であるツルキ、ミシャール両王子をそれぞれ、リヤド州知事、メッカ州知事の要職から更迭した。同時に息子であるムハンマド王子を国防相に抜擢、数か月後に副皇太子に据えるなど後継者のレールを敷いた。

 両派の対立は激しさを増し、アブドラ派は王宮内の灰皿など各所に無数の盗聴器を仕掛け、有力王子たちの電話も盗聴。数十メートル以内なら電話番号を特定できる中国製の装置まで購入した。サルマン派には今回の殺害事件で解任されたカハタニ元王室顧問が食い込み、抗争で疑心暗鬼になっていたムハンマド王子にクーデターが企てられているなどと陰謀論を吹き込んだ。

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