中東を読み解く

2018年12月13日

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 仏東部ストラスブール中心街のクリスマスマーケット近くで12月11日、2人が死亡、13人が重軽傷を負う銃乱射テロがあった。犯人はイスラム過激思想に染まった要注意人物で、フランスをたびたび襲った過激派組織「イスラム国」(IS)の影が蘇った。当のISは今もなお、シリアやイラクでしぶとく抵抗、勢力を復活させる動きを見せるなど壊滅には遠い状況だ。

銃乱射テロの現場(REUTERS/AFLO)

2500人の“死兵”

 世界を震撼させてきたISは2017年7月、イラク最大の拠点モスルが陥落、同10月には組織の事実上の首都であったシリアのラッカが崩壊した。現地からの情報などによると、ラッカに立てこもっていたISの戦闘員は7割が玉砕、3割が逃亡した。指導者のアルバクル・バグダディはじめ多数の幹部も逃亡したと見られている。

 ラッカを脱出したIS戦闘員の主勢力はシリア東部のデイルゾール県など大河ユーフラテス川沿いにイラク国境方面に逃亡。現在は国境の町ハジン周辺に立てこもっている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、2000人から2500人の戦闘員がこの狭い地域に追い詰められているが、その広さはニューヨーク・マンハッタンと同じくらいで、わずか30平方キロだという。

 このISの一掃作戦を進めているのは、米軍に支援されたクルド人主体のシリア民主軍(SDF)だ。作戦は9月ごろから本格化、SDFは戦闘員1万5000人を動員、装甲車両などを大量に投入し、一気に制圧する計画だった。この作戦には米特殊部隊2000人も支援している。

 だが、作戦は難航した。IS側は周辺に地雷を敷設、トンネル網を張り巡らして徹底抗戦の構えだ。シリア内戦の状況をウオッチしている「シリア人権監視」によると、SDFが米空軍の爆撃支援を受けて攻撃を本格化して以来、IS戦闘員827人を殺害したが、SDF側も480人が死亡した。民間人の犠牲者も300人以上に上っている。

 特に11月24日には、ISが砂嵐をついて奇襲攻撃。SDF側は約80人を殺害された。ISも50人の死者を出したが、SDFの戦闘員30人を捕虜にし、うち1人は首を切断されて死亡。処刑のもようがネットで公開された。米軍司令官は悪天候で空爆ができなかったとしているが、「ISは今や失うもののない“死兵集団”。SDF側が攻めあぐねているのが実情だ」(ベイルート筋)。

 しかもIS側の攻勢はシリアだけにとどまらない。ISの拠点から約500キロも離れたイラク東部のディヤラ州でもISは検問所を設置し、政府当局者を拉致して殺害するなど活動を活発化させている。テロ専門家によると、イラクでのISによるゲリラ攻撃は1カ月70回以上に上り、潜在的な勢力は2万人を超えるという。

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