西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年12月25日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

 アメリカ政治は混乱状態にある。しかも、その混乱状態が慢性化しつつあり、今後混乱の度合いをさらに増す可能性がある。

(写真:AFP/アフロ)

一部の連邦政府機関が閉鎖に追い込まれる

 今年1月、Wedge Infinityで、移民問題をめぐる対立から暫定予算が成立せず、連邦政府が閉鎖したという記事を出した(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11737)。今年最後の原稿もまた、同じく移民問題をめぐって大統領と連邦議会が対立し、12月22日から一部の連邦政府機関が閉鎖に追い込まれたという記事で締めくくらなければならない。連邦政府一時閉鎖の影響を受ける連邦政府の職員は80万人、うち38万人が一時帰休、42万人が無給で働くことになると報じられている。

 トランプは、民主党が不法移民対策を目的とする米墨国境地帯の壁建設費用を予算に組み込む形で共和党と歩調を合わせない限り、連邦政府の閉鎖は「非常に長い期間」続くと発言している。トランプは、国境の壁建設に批判的な立場をとる民主党に一時歩み寄る姿勢を見せたものの、自らの支持基盤からの突き上げを受けて態度を硬化させた。今年7月にワシントンポスト紙などが行った調査によれば、世論の65%が国境地帯の安全を強化するプログラムを強化することを支持してはいる。だが、各種世論調査によれば、国境地帯の壁の建設については反対派が賛成派を一貫して上回っている。そして、今月初めにキニピアック大学が行った調査によれば、もし連邦政府が閉鎖することがあるとすれば、その責任はトランプ大統領と共和党にあるとする人は、民主党にあるとする人に対し、51%対37%で多い。

 これら世論調査を見る際には、その評価が民主党支持者と共和党支持者で明確に分かれていることに注意する必要がある。先に指摘した政府閉鎖の責任の所在について、民主党支持者の90%がトランプと共和党にあるとしているのに対し、共和党支持者の76%が民主党にあるとしている(ちなみに、無党派層は48%対39%でトランプと共和党に責任があるとしている)。国境の壁建設については、共和党支持者の86%が支持し、民主党支持者の90%が反対するという状態で、有権者レベルでも党派に基づき態度が明確に分かれている。

 アメリカでは現在、連邦議会の上下両院ともに共和党が多数を占め、大統領職も共和党が占めている。このように予算は相対的に通過しやすい状況にあるにもかかわらず、暫定予算は通過しなかった。今年の中間選挙の結果を受けて、来年以降は議会の上下両院の多数派政党がねじれ、その結果として議会(下院)の多数派政党と大統領の所属政党が異なるという状況が発生する。現在、議会は予算すら通すことのできない、決められない政治を大きな特徴としているが、この状態は来年以降も続き、問題はさらに悪化する可能性が高い。

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