2024年5月2日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年9月12日

 宣威市は鉱物資源の開発と煙草が主要産業だ。車窓からは道路を行き交う石炭やコークスなどを乗せた大型トラックや黙々と煙を上げる製錬所が見える。15時に出発し、途中1時間半ほど名所の珠江源を見学した。18時半に市の中心部に到着。村まで案内してくれるという姑姑(注:叔母さんという意味。張さん父の妹)の次男・楊文明と落ち合った。楊文明は自分のミニバンを運転して先導してくれた。

往路で4WDがぬかるみにはまり立ち往生

 中国で村へ行くにはまずは県の中心へ、そこから郷鎮の中心へ、そして村へという流れで列車やバスを乗り継いでいく。大抵、郷鎮までは舗装された道があるがそこからが大変だ(注:郷鎮は農村の末端の行政区である。人口や産業の密集度が比較的高いものを鎮、低いものを郷と区分しているようだが明確な基準は不明である。郷鎮の下に位置する村は自治組織である)。

 今回は蘇暁原が誇りにする4WD車があるから大丈夫だと思っていたが、村に入っていく道は途中から凹凸がものすごく激しくなった。そこに雨が降って道がぬかるんでいたため、車は深みにはまって出られなくなってしまった。蘇暁原の顔が見る見る不安げに曇り血の気が引いて白んでいる。

電気コンロで調理する山羊鍋

 地元の人たちの先導でぬかるんだ道を何とか脱出し、20時半に姑姑の家に到着すると、すでに親戚一同勢ぞろいして私たちの到着を待っていた。食卓には山羊肉をベースにした鍋が用意されている。家は1970年代に建てられた木造でかなり痛んでいるが、鍋は電気コンロで温められており、なんとも不釣合いな感じがする。山羊鍋はミントの葉、青葱、白菜、豆腐、ジャガイモなどを入れてしょうゆと唐辛子のタレで食べる。肉は柔らかくて臭みもなくおいしかった。

若者は出稼ぎ 老人しかいない

 姑姑の暮らす村は張村ではなく、張村のある龍潭鎮の隣の得禄郷にある宋、候、李などの苗字の家族が住む別の村である。姑姑は張村から宋家に嫁いだ。約200戸のこの村は老夫婦2人で暮らす家がほとんどだ。

 姑姑夫婦は家族9人分の土地、十数畝(1畝は6.67アール)を所有しているが、今は、夫婦が食べるだけのものをつくり、使わない農地は他の家に貸し出している。条件のよい土地は1畝200元で(1元=約12円)、悪い土地はただで貸す。1畝150元の政府補助金は貸し手である姑姑夫婦の手に入る。子どもの援助もあり年金がなくても暮らしていける。

 村の人たちの主な収入源は養豚、煙草の葉の栽培、或いは出稼ぎである。トウモロコシなども栽培しているが、豚の餌だという。豚肉の価格は上昇し続けており、「大きな豚だと1頭2000元で売れる」と農民たちは明るい顔で話していた。しかし、豚を飼っているからか、トイレの管理が悪いからかハエが非常に多い。食事中にも何匹も飛び交っている。この家にトイレはなく歩いてすぐのところにある近所の共同トイレを使っている。藁葺き小屋の中に穴を掘り、足を乗せる板が置いてあるだけのものだ。

 煙草の葉は燻して加工してから出荷する。煙草農家は各家に「烤房」(煙草の葉を燻して加工する施設)を持っている。煙草を栽培すれば利益にはなるが、出荷するまで大変な手間がかかるため、「同じ金を稼ぐなら出稼ぎに出たほうが楽だ」と考える人が多く、若い世代はほとんどが出てしまっている。隣家には小さな子どもが2人いたが、聞くと父母は上海で出稼ぎしており、祖父母が孫を育てているという。


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