中国政府は、昨年5月太陽光発電からの電力に関する固定価格買取制度(FIT)の対象設備量に突然上限を設定し、実質的なFITの打ち切りを行った(『中国太陽光バブルついに終焉へ、世界の太陽光発電市場は曲がり角に』)。このため、太陽光発電設備の導入量は年初の予想量を下回ることとなったが、それでも累積導入量はむろんのこと、新規導入量でも依然世界一の地位を維持している。中国の太陽光と風力発電設備量は世界の約3分の1を占める。
設備生産面でも中国は世界の太陽光モジュールの6割の生産を担っているが、中国が世界一なのは、再エネの発電設備・発電量とモジュール生産だけではない。再生可能エネルギーに関する特許件数でも、中国は米国、日本を抜き世界一になっている。
中国はあらゆる面から再エネ大国になったが、中国が再エネの覇権を握ることにより世界のエネルギー安全保障にも影響が生じる。例えば、大量の天然ガス、原油、石炭の欧州向け輸出を行い、欧州への強い影響力を維持しているロシアは、需要国での再エネの導入により輸出量が減り徐々に力を失う。化石燃料輸出国に代わり台頭するのは、再エネ関連の特許を持ち、EV用電池生産なども行う中国だ。
中国は電力需要増に直面し、大気汚染問題から競争力のある石炭火力の新設ではなく、再エネ導入の道を選択したが、電力需要が大きく伸びない先進国の事情は異なる。温暖化対策として再エネ導入を進める日本は、FITなどの負担増による電力価格上昇に悩まされている。事業用設備のFIT制度を打ち切ったドイツでも、20年間継続するFITの負担金は大きくその額は日本の3倍近くになっている。大市場を持つ中国に覇権を握られるなかで先進国は再エネにどう取り組むべきか考えるべきことは多い。
再エネ発電設備量世界一の中国
2018年第1から第3四半期までの中国の太陽光発電設備導入量は、昨年5月末の実質的なFIT打ち切りにより、3450万kW、前年同期の4300万kW比マイナス20%となったが、それでも多くのコンサルタントの予想を上回った。世界2位の米国での2018年の導入量は1100万kWと予想されており、中国は依然として他国を圧倒する規模で世界最大量の導入を行っている。
2017年末での累積設備量では、中国のみが1億kWを超える設置を行っており、世界市場の約3分の1のシェアを保有している(図-1)。中国は風力発電設備量でも世界シェアの3分の1以上を持っている(図‐2)。
太陽光、風力発電設備共に日照、風量に恵まれ土地に余裕があった西部諸省を中心に導入されたため、地元における電力需要量は大きくなく電力供給量が需要量を上回る事態がしばしば発生した。その結果、風力発電設備を中心に大規模な出力制御が行われている(『世界中で捨てられる再エネからの電気』)。
2018年には風力発電設備からの発電量の約12%が制御された。国家発展改革委員会は、2019年に制御量を10%以下、2020年に5%以下にする目標を発表し余剰電力を沿岸部を中心とした需要地に送る送電網の拡張を急いでいる。その一方、出力制御を避けつつ、中央政府の補助なしで太陽光、風力発電設備を更に建設すべく新しい方針を出している。