12月2日からポーランドで気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が始まったが、欧州連合(EU)では温暖化対策よりも雇用と経済が重要と考える国も出てきている。その最たるものはドイツだ。今年1月、キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟と社会民主党の連立交渉時、まず合意したのが、2020年の温室効果ガス排出目標の放棄だった。その後も、ドイツはEU内の再エネ導入目標の引き上げに抵抗し(『ドイツの選択は温暖化対策より経済と雇用』)、最近ではEU内部で非公式に議論された2030年の温室効果ガス排出目標の引き上げに反対したと報道されている。
ドイツは発電量の約40%を褐炭、石炭火力発電に依存しているが、温暖化対策のため脱石炭が求められている。一方、雇用、地域経済への影響と電力の安定供給の観点から石炭火力発電所を直ちに閉鎖することもできない。ドイツ政府は石炭火力をいつ閉鎖するか議論するため石炭委員会を立ち上げ、今年末までに結論を出す予定だったが、結論は出ず来年2月末まで先送りされた。石炭問題もドイツ政府がEUによる温暖化対策、再エネ導入目標強化に反対する理由の一つだ。
そんなドイツを横目で見ながら、温暖化問題への取り組み強化を打ち出したのが、フランス・マクロン大統領だった。運輸部門からの二酸化炭素排出量削減を目的に、フランス政府は燃料税(炭素税)を導入し2014年から燃料油、ガソリンとディーゼル油価格を引き上げてきた。2018年原油価格の上昇を受けガソリン、ディーゼル油価格がかなり高止まりしたにもかかわらず、2019年1月からの炭素税による燃料価格の引き上げを11月6日マクロン大統領が発表したところ、国民から大きな反発を受け、「黄色ベスト」運動によりフランス各地で混乱が発生した。国民の選択は温暖化対策よりも目の前の経済だったということになる。