World Energy Watch

2018年8月16日

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 電気自動車では世界最大企業となったテスラだが、CEOイーロン・マスクの弟が取締役を務め経営に携わっている。また、従兄弟がCEOを務めていた太陽光発電関連企業をテスラが買収し、従兄弟はテスラの幹部社員として勤務している。親族を重用するマスクは米国の経営者としては、かなりユニークな判断基準を持っているのだろう。火炎放射器を販売する大企業の経営者も珍しい(『テスラ・イーロン・マスクの火炎放射器は本当の炎上商法』)。

イーロン・マスク氏(REUTERS/AFLO)

 マスクは、テスラ株を20%のプレミアム付きで買い取り、テスラを非公開会社にすると8月7日ツイートし、証券取引委員会(SEC)の調査を受ける事態になっている。さらに「資金の裏付けがないにもかかわらず資金は手当て済みと発信し、意図的に株価を吊り上げた」として空売りを行っている投資家から集団訴訟を起こされている。8月13日、マスクは資金についてはサウジアラビア政府系ファンドから提供されると明らかにした。今後の交渉次第だが、テスラの経営権はサウジアラビアに移る可能性もある。しかし、公開会社との比較では株式の流動性は明らかに劣るのに、なぜマスクはテスラを非公開会社にしたいのだろうか。

資金繰りに窮するテスラ

 テスラは2010年の上場後、年間利益では一度も黒字化したことはなく資金を使うばかりだった。損失の穴埋めと投資に必要な多額の資金需要を賄ったのは、主として増資と社債発行だった。17ドルで上場された株価は8月13日の終値では356.41ドルまで上昇している。20倍以上の株価上昇が増資による資金調達を支えた。(図-1)

 しかし、社債はジャンクボンド(くず債権‐倒産の可能性が相対的に高い債券)と格付けされ、昨年夏に発行された社債価格は今額面を約10%下回っている。新規の社債発行はかなりの利率でないと難しい状況だ。テスラの時価総額は今608億ドル(6兆7000億円)とGMを上回っているが、格付け会社ムーディズは、テスラのCFR(企業体格付け)を信用リスクが高いとされるB3ネガティブとしている。これ以上の株式発行は難しいだろう。図‐2の通り、今まで外部資金で資金需要を賄ってきたテスラが外部資金導入に行き詰まると、減少を続ける手持ち現金が尽き破綻する可能性が見えてくる。ゴールドマンサックスは、2020年までにテスラは100億ドルの資金を必要とすると予測しているが、その資金手当ては不透明だ。

 アナリストの中には、赤字が続き近々資金が尽きるとの厳しい見方もある。多くの投資家が株価下落を予想しているため浮動株の30%弱が空売りされており、株式市場史上最大の空売り株になっているとの報道もある。今後も外部資金を手当てする必要があるが、株式、社債市場で資金調達が難しいとすれば、上場を維持する意味はマスクにはないだろう。上場により、SECへの報告、アナリストの質問への回答が必要とされるなど煩わしいことも多くあるからだ。資金調達面では、上場の必要性はなくなってきたように思われる。

 8月13日、マスクは私的企業にするための資金をサウジアラビアの政府系ファンドから調達する予定であることを明らかにした。SECの調査、投資家の訴訟に応えるためには、資金源をはっきりさせる必要があるとの判断だろう。株式でも社債でも資金調達が厳しくなったテスラが頼った金主は、サウジアラビアだったということだ。今後資金調達をファンドに依存することになるのだろうが、今後の経営組織の詳細については不明な点が多い。

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