電気自動車企業テスラのイーロン・マスクがCEOを務めるスペースXが世界最大級のロケットの打ち上げに成功し、マスメディアから注目を浴びた。日本でもテレビのワイドショーをはじめ多くのメディアが取り上げた。朝日新聞・天声人語は「妄想を現実にし続けている」とマスクを持ちあげている。
しかし、マスクの世界は、それほどきれいごとではない。スペースXに加え、CEOを務めるテスラのため事業資金作りに余念がないマスクは、話題作りにもたけている。時としては、世間の耳目を集めることにより宣伝効果を狙う炎上商法を手掛けることも辞さない。いま、注目を浴びている炎上商法の商品は、マスクのトンネル掘削企業ボーリング社が手掛ける「火炎放射器」だ。
2016年末スペースXの社員が、ロサンゼルスの本社社屋前の横断歩道でトラックに撥ねられる事故があった。この事故を受け、マスクはスペースX本社社屋からロサンゼルス国際空港までトンネルを掘ると発表し、即座にボーリング社を設立した。既にスペースXの駐車場で試験的な掘削を始めている。
昨年10月マスクは20ドルのボーリング社の帽子を売り出した。購入者の中から10名をトンネルの工事現場にマスク自身が案内する企画を発表し、5万個を売り切った。この販売で100万ドルの資金を作ったが、さらに1月下旬500ドルの火炎放射器を2万個売り出し完売した。売り上げ1000万ドルだ。話題作りと同時に資金を集める手法だ。
テスラ・ロードスターが宇宙に
将来の月面、あるいは火星着陸を目指し、2月6日にスペースXが打ち上げた世界最大の推力を持つロケット、ファルコンヘビーは長さ70メートル、幅12.2メートル、地球低軌道まで63.8トン、火星までであれば16.8トンの積載が可能だ。スペースシャトルの地球低軌道までの積載量は24トンなので、ファルコンヘビーは2.5倍の積載可能量を持つ。マスクは、スターマンと呼ぶマネキンを運転席に乗せたテスラ・ロードスターをロケットの先端に取り付け、運転席の後ろに設置したカメラの映像を地上で見られるようにしている。
ファルコンヘビーにはブースター(補助推進装置)が3基利用されているが、打ち上げ費用を削減するため全て回収することが計画され、両側の2基は地上に着陸することで回収された。メインの1基は海上に激突し、回収できなかったと報道されたが、経費削減につながる試みだ。
マスクは、ロケットとロードスターは太陽の周りを数億年公転することになると期待しているが、数年で分解すると予想する専門家もいるようだ。ロードスターを載せたことについてマスクは「馬鹿げて、面白いことが重要だ」とコメントしたが、億万長者が10万ドルの車を面白いとの理由で宇宙に打ち上げ資源を無駄使いすることは、世界の不平等・格差社会を体現していると非難する報道もある。