World Energy Watch

2018年2月15日

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スペースXの資金はどこから

 スペースXの資金はロケット打ち上げの収入と資金提供に依存しているが、同社は非上場会社であり株主構成などは非公開だ。2015年1月グーグルとフィデリティ・インベストメンツが共同でスペースXに10億ドルを出資したことが証券取引委員会の資料で明らかになったが、得られた権益は10%に満たないとされた。スペースXの当時の時価総額は100億ドル以上ということだ。スペースXの株式を一般の投資家が購入することはできないので、間接的に保有する唯一の方法は、株主であるグーグルの株式を購入することと紹介するメディアもある。

 2016年11月スペースXはインターネットサービス提供のため4400の人工衛星を打ち上げる申請を連邦通信委員会に行ったが、その申請の中でマスクがスペースXの54%の株式、議決権については78%を保有していることが明らかにされた。 

 2017年後半、スペースXは4億5000万ドルの資金調達を行っており、現時点でのマスクの持ち分は不透明だが、企業価値評価のコンサルタントは昨年末現在のスペースXの企業価値を215億ドルとみている。テスラ株と合わせればマスクは大変な資産家だが、保有するもう一つの非公開会社ボーリング社に自己資金を使う意図はないようだ。

トンネルも掘削するマスク

 2016年12月スペースXの従業員3人が本社前でトラックに撥ねられる事故があった。事故の3時間後マスクは、「交通問題にはうんざりする。トンネル掘削機を作って、掘り始めるか……」「会社名はボーリング社にする」とツイートした。スペースX本社からロサンゼルス国際空港までトンネルを掘り、道路を利用しなくても良いようにする構想だ。

 ボーリング社は、スペースXの駐車場から掘削を開始しており既に100メートル掘り進んでいる。国際空港に向けてさらに3.2キロメートル掘削する許可を得ている。ボーリング社によると同社のトンネルの特徴は次にある。

 ○通常のトンネル掘削には1マイル当たり10億ドル必要なこともあるが、掘削コストを10分の1以下にする。そのため通常のトンネル径8.5メートルを半分にし、車をスケート呼ぶ自動運転の電動台車に乗せ運搬する。直径が半分になれば掘削費用は3分の1から4分の1になる。また、スケートには車以外に8人から16人の乗客、あるいは荷物を載せることもでき、時速200から240キロメートルで輸送可能だ。

 ○トンネル掘削機(TBM)の馬力を通常の3倍にし、スピードを上げる。通常のTBMは掘削と支保に半分ずつ利用されるが、技術開発によりこの割合を変更し掘削時間を増やす。TBMを自動化することにより効率と安全性を向上させる。掘削により発生する岩石と土砂の処理には時間と費用がかかるので、この作業を削減するため発生した土砂などを利用しレンガを製造し、履工(トンネル内の内装)に用いることにより効率化を図る。

 ボーリング社は、使用する新技術などを実証するため図に示されている10.5キロメートルの実証トンネルの掘削許可を関係市に申請している。ロサンゼルス地区に加え、ワシントンDCとボルチモア間およびシカゴ・オヘア空港と市街地を結ぶルートについても検討しているとボーリング社は述べている。

 12月23日夕刻カリフォルニア州南部サンタバーバラ郡にあるヴァンデンバーグ空軍基地から、人工衛星を搭載したスペースXのファルコン9が打ち上げられた。打ち上げ時の雲は不思議な形になるため、目撃者から「地球外生物の来襲」「北朝鮮のミサイル」「サンタクロースの予行演習」などSNSで様々な発信があったが、この雲に気を取られた車が追突事故を起こしてしまった。自動車事故をなくすためトンネルを掘削しているマスクのロケット打ち上げが事故を誘発するのは皮肉な話だ(写真)。

 

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