World Energy Watch

2017年10月17日

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 今回の衆議院選では原発の利用も一つの争点だが、世論調査では有権者の関心はあまり高くない。既に5基の原発が再稼働されており、世間の関心は再稼働問題から北朝鮮、経済政策などに移っているようだ。しかし、原発、エネルギー政策は、私たちの生活には無論のこと、安全保障、気候変動問題にも影響を与える大きな問題だ。投票前にエネルギー政策をもう一度考えてみよう。

(Olivier Le Moal/iStock)

 エネルギー政策を考える際に考慮される点は、①エネルギー価格、②エネルギー安全保障、③気候変動・環境問題の3点だ。一国がエネルギーを調達する際には、これらの3点をバランス良く組み合わせる最善のエネルギーミックス(和製英語のようだが、そうではない)を達成する政策が作られるが、重視される点は国より異なる。

 例えば、原子力の利用が多く、エネルギー自給率も高いフランスは気候変動対策を重視するため、二酸化炭素を相対的に多く排出する石炭使用の火力発電所の利用を2023年までに中止する政策を打ち出している。東欧のポーランドはロシアへの天然ガス依存度が高いが、安全保障を考え、ロシア以外からも天然ガスを輸入できるように液化天然ガス(LNG)受け入れ基地を新設し、供給源を米国にまで多様化している。さらに、国内に賦存する石炭の利用が厳しくなる可能性があることから原発の新設も決めた。

 国より自給率、国内産のエネルギーが異なることからエネルギーミックスのあり方も異なるが、自国にとり最善のエネルギーミックスを考え、その達成に政策を利用することはどの国でも共通だ。日本はエネルギーミックスをどのように考えれば良いのだろうか。

上昇した電気料金

 2011年の東日本大震災後、定期点検に入った原発は停止し、その後原子力規制委員会の審査に合格した場合には再稼働が認められることになった。原発の停止により当初は石油、その後LNG火力の比率が上昇し、燃料購入量も増加した。2011年から化石燃料価格が上昇し、電気料金に影響を与えた(図-1)。発電量1kW時当たりの燃料費は、2010年度の3.6円が2011年度には6.1円、13年度には8.1円まで上昇する。2014年後半から化石燃料価格が下落し始めたことから、燃料費も下がり始めるが、2017年度に入り燃料費は上昇し始めている。

 燃料費に加え、電気料金に影響を与えたのは、民主党政権時の2012年7月に導入された再生可能エネルギーからの電気を買い取る固定価格買い取り制度(FIT)の負担金だった。太陽光などの再エネによる発電設備からの電気を高く買い取り、その費用は電気料金で賄われている。今年度の標準家庭の負担額は8000円を超えている。燃料費とFIT負担額が電気料金に与えた影響は図-2に示されている。化石燃料価格の単価の下落により、2016年度の1kWh当たりの燃料費は震災前の2010年度の水準に戻ったが、FIT負担金により家庭用の電灯料金は10%以上上昇している。

 FITを導入した欧州主要国は需要家負担により上昇した電気料金に悩みを深め、日本が導入を検討しているころから相次いでFIT制度の変更に乗り出していた。買い取り額の減額ばかりか、スペインは2013年にFITの金額を遡及して減額した。そのためスペインで大きな導入が続いていた風力発電所の導入は一挙に減速した(図-3)。そんな中で原発を停止し、FITを導入した当時の政権が電気料金上昇とその影響に考えが及ばなかったとすれば、不幸なことだった。

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