World Energy Watch

2018年5月15日

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 現在見直しが行われている、2030年のエネルギー、電力供給に関するエネルギー基本計画では、電力供給における再生可能エネルギーの比率を22%から24%にする目標が織り込まれている。この比率は2014年の計画策定時から見直されることがなく、据え置かれたことで、日本は再エネ導入が進んでいる一部欧州諸国に比べ遅れていると批判するマスメディアもある。それぞれの国のエネルギー事情、自給率、供給の分散、使用エネルギーは異なるのに、なぜ再エネ比率だけで、日本が欧州より遅れていると批判できるのだろうか。

(beresnev/iStock)

 エネルギー政策の目的は、安全で、環境性能に優れたエネルギーを安定的に安価に国民に供給することであり、再エネの比率を増やすことではない。再エネの比率が増えれば、エネルギー政策の目的達成が容易になるかと言えば、それも実現しそうにない。再エネ導入により自給率は向上するが、供給の脆弱性は拡大する。温室効果ガスの削減は可能になるが、供給コストは増大する。二酸化炭素を削減するのであれば、もっと安価な方法もあるだろう。

 再エネは、産業を育成するという説も、太陽光パネル製造事業者が中国に集中し、アジアの風力発電設備シェアの大半を中国企業が握っている姿をみれば、かなり眉唾だ。再エネ関連の業界団体は雇用が大きく増えると声高に主張しているが、欧米の雇用の実態を分析すれば、その主張もかなり怪しい。

 マスメディアには再エネによる成長の主張があふれているが、再エネ導入を進めた欧米で何が起こっているのか私たちは冷静に見たほうがよい。化石燃料の消費量減と温室効果ガス削減につながる再エネは重要な電源に違いないが、まだ大きな欠点もあり無条件に導入を進められる状況にはない。いい加減なマスメディアと一部の政治家に騙されてはいけない。

供給の分散が大切な理由

 北米、欧州に北極上空にある極渦と呼ばれる低気圧の渦が下りてくることがある。2014年には米国東部が大寒波に見舞われ凍えることになった。南部ジョージア州の気温が摂氏零下20度を下回るほどだった。写真は、当時出張時にニューヨーク州上空から沿岸部を撮った写真だ。

 

 海岸線が凍えているように見える。今年は北米と欧州が寒波に見舞われた。この極渦の移動は、温暖化により引き起こされているとの仮説をカリフォルニア大学の研究者が発表した。暖かい空気が北極上空に流れ込むことにより極渦が押し出され、北米あるいは欧州に移動するとの説だ。今年初めの北極の温度は平年の気温を大きく上回っており、これが2月欧州の寒波を引き起こしたと指摘している。

 2014年の北米大寒波時には電力供給が問題になった。米国北東部で天然ガス需要が急増した結果、パイプラインの輸送能力を超える需要が発生し、発電所で天然ガスが不足する事態が発生したのだ。さらに、あまりの低温のため石炭火力の貯炭が凍り付き、使用できない事態も発生した。当時北東部9州には、天然ガス火力発電設備5505万kW、石炭火力2199万kWがあり、全設備能力の55%を担っていた。この設備の一部が使用不能になったが、停電は避けられた。9州に2372万kWの設備を持つ原発が全て稼働していたからだ。全米でも全ての原発が稼働していた。

 90%近いエネルギー自給率を持ち、コスト競争力に優れるシェールガス、石炭を保有する米国が、原子力、再エネと供給の多様化を進める最大の理由は、供給の分散を進めることによる安全保障面の強化だ。図‐1に示す通り、米国の電源構成は、エネルギー自給率8%の日本より分散が進んでいる。

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