10月13日、14日の両日、九州電力は管内の太陽光と風力発電設備からの発電量が需要量を超えたため、事業者に対し出力制御を行い発電量を抑えた。先月の北海道停電で多くの方に知られたように、電気は需要量と発電量が常に一致しなければ周波数が不安定になり、停電する。北海道では供給量が需要量を下回り停電したが、供給量が需要量を上回っても停電する。
NHKあるいは、朝日新聞に代表される日本の大手メディは「再生可能エネルギー推進」の番組、記事を多く報道することがある。10月14日付朝日新聞は1面で「余る電力 再生エネ岐路」との記事を掲げたが、その小見出しは『「主力」の原発を優先』だ。再エネ引き取りのため原発の運転を止めよと主張しているようだが、記事が全く触れていない極めて重要な点がある。再エネ導入が電気料金と安定供給にもたらす影響だ。
再エネ導入が招く電気料金上昇と供給の不安定化
太陽光発電などの再エネの電気は、固定価格買取制度に基づき買取が行われ、その費用は電気料金の一部として全消費者が支払っている。今回出力制御を行った九州電力の家庭用電気料金は、一般電気事業者10社のなかで水力が多い北陸電力に次いで2番目に安く、今年8月時点で使用電力量250kW時の家庭で6368円だ。うち、725円が再エネからの電気買取に使われる賦課金だ。
その電気料金を支えているのはコスト競争力がある原発からの電気だ。朝日新聞の記事が全く触れていないのは、電気のコスト、経済性の問題だ。稼働中の原発を止める、あるいは稼働率を落として再エネからの発電量を引き取れば、当然電気料金は上昇する。
再エネからの発電量が上昇し、電気料金の上昇と電力の安定供給の問題を抱える国もある。風力大国のデンマークに次ぎ電気料金が高いドイツでは、太陽光と風力発電からの発電量が増えたため、天然ガス火力の稼働率が下落し、電力会社が天然ガス火力発電設備を閉鎖することも起こるようになってきた。天候次第の再エネからの発電量が落ちれば、十分なバックアップ設備がなければ停電することになる。停電を避けるためドイツ政府が取った手段は「戦略的予備力」として緊急時に発電するため古い褐炭火力発電所を維持することだった。
豪州南オーストラリア州では、2016年9月嵐による送電線の切断が全風力発電設備の停止を招き、州全域が停電した。当時の連邦政府ターンブル首相は停電後次のようにコメントした「これは非現実的な再エネ導入目標を掲げた州政府首脳に対する目覚ましだ。電力の安定供給が最重要課題だ。温室効果ガス削減も重要だが、安定供給と整合性がなければならない」。
それにしても、なぜ九州で太陽光発電の導入量が電力の需要量を上回るほど増えたのだろうか。