Wedge REPORT

2019年1月24日

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 「ビックカメラに行列ができてる!みんな、PayPay(ペイペイ)で買い物してる」

 2018年12月、突然「PayPay」という耳慣れない言葉が話題となった。PayPayとはソフトバンクグループとヤフーが共同で手がけるモバイル決済アプリだ。同アプリで買い物をすると、支払い額の20%をポイントバックするキャンペーンを始めたところ、開始から10日間で還元額が 100億円に到達した。この「PayPay祭り」は、今後長期にわたって続く「キャッシュレス決済争奪戦」の序章にすぎない。

2018年11月、LINEとみずほフィナンシャルグループは共同で新銀行を設立することを発表した (YOSHIO TSUNODA/AFLO)

 キャッシュレス決済とは現金を使わない決済方法を意味する。安倍政権は「未来投資戦略2017」において、キャッシュレス決済比率(現金以外の手段による年間支払金額を国の家計最終消費支出で割ったもの)を2027年までに現在の約2倍にあたる40%に引き上げる数値目標を掲げた。さらに2019年10月に予定される消費増税時の景気対策として、キャッシュレス決済に対してポイント還元を実施するなど、強力な推進策が予定されている。また、来年度からは電子マネーでの給与支払いが解禁されるなど、規制緩和も進んでいる。

 これらは大胆な施策にも思えるが、韓国では2000年から、年商240万円以上の店舗にはクレジットカード取り扱いを義務化し、月1000円以上のキャッシュレス決済をした消費者には宝くじ参加券を付与した。こうした強引かつ奇抜な施策により、主要国トップとなるキャッシュレス決済比率89%を達成している。

 そもそも、なぜキャッシュレス決済を推進する必要があるのだろうか。経済産業省が2018年4月に出した報告書「キャッシュレス・ビジョン」では、キャッシュレス決済を進めるべき理由として、①インバウンド消費の取り込み、②現金決済コスト削減、③新ビジネスの創出、という3点を主に挙げている。

 まず、VISAの調査によると、キャッシュレス決済の進まない日本に不満を持つ外国人観光客の割合は4割にのぼる。決済インフラを改善しなければ、東京オリンピックのある2020年のインバウンドにおける機会損失は109億ドルに達すると試算している。

 また、見過ごされがちなのが現行の現金決済インフラの維持に多額のコストがかかっている点だ。通貨発行、店頭設備、レジ締めなどの人件費、警備費、ATM設置・運用などをあわせると社会コストの総額は1兆6000億円と試算されている(野村総合研究所「キャッシュレス化推進に向けた国内外の状況」)。低金利時代で銀行の支店・ATM網の維持が困難となり、また生産性向上のためレジ店員削減などの省人化が求められているなか、現金決済コストの削減が必要だ。

 さらに、キャッシュレス決済普及による新ビジネスの創出も期待されている。経済産業研究所(RIETI)の中島厚志理事長は「決済履歴を使って瞬時に自動車ローンや消費者ローンの信用判断をする中国・アリババグループの金融サービスのようなサービスの登場も期待される。これらはプロダクト・イノベーションと称されるサービス革新であり、日本もできることをやらないと世界の潮流から取り残されかねない」と指摘する。

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