サイバー空間の権力論

2017年6月6日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 前回はコンピュータと人間の脳を接続することで新たな展望を図る、Facebookをはじめとした様々な試みを取り上げた。そこでは、病気などの対処として期待が持てる一方、SF小説が描いてきた未来のコミュニケーションにおける盲点について考察した。我々は不完全であるが故に向上心を持つ存在なのだろう。

 技術は我々の生活に大きな影響を与えるが、今回は中国で生じている興味深い事例について検討したい。それは驚くべき現象であり、疑問を抱く点も多い一方、単純に否定できない複雑な問題を我々に提示している。

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QRコードとスマホだけで決済
進む中国の電子決済

 日本人は現金払いが他国に比べて多いと言われている。カードと言えばクレジットではなく各企業が発行するポイントカードであり、それらが財布の幅を広げている。ところが中国では現金を利用する機会が近年急激に減っており、代わりにスマホを利用した決済手段が使われている。

 利用方法は簡単だ。まずスマホに決済アプリをインストールし銀行口座などと紐付け、そこからアプリに指定した金額をチャージする。日本は電子決済に専用の読み取り装置が必要であり、装置の費用を店舗が負担することもあるが、中国ではQRコードをかざすだけで決済画面が表示され、そこで支払いを済ませることが可能だ。店舗はQRコードを印刷したシールひとつ用意するだけで電子決済が可能となるばかりか、通常クレジットカードや電子決済時に支払われる手数料もかからないか、あったとしても極く小額ということもあり、急激に中国で拡大している。

 電子決済普及の背景には、現金の強盗や現金詐欺等を回避するほか、決済時に履歴が残ることから汚職が減少するともみられている。実際電子決済化が進むインドでは、政府が高額紙幣の使用を禁止し、電子決済を国民に普及させるための政策が進んでいるが、それらの目的は紙幣による汚職の防止が理由のひとつだ。

 中国における電子決済の拡大スピードは著しく、屋台や神社の賽銭箱にもQRコード、つまり電子決済が用いられており、現金を扱う機会が急激に減少しているという。中国における電子決済のシェアは2つの大企業が競争しているが、ひとつはネット通販最大手のアリババグループが運営する「アリペイ(Alipay)」。もう1つは中国のLINEともいわれる「ウィーチャット(We chat)」で有名な企業「テンセント」が運営する「ウィーチャット・ペイ(WeChat Pay)」。どちらも多くのユーザーを獲得しているが、国連の報告では、両者のアプリ等を利用した2016年の中国における電子決済額は3兆ドルに達しているという

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