世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年2月6日

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 南シナ海をめぐっては、2017年11月にフィリピンが議長国を務めたASEAN首脳会議の際に「懸念」の文言が削除されたが、シンガポールが議長国となった昨年に同文言が復活し、タイが議長国を務める今年も維持された。今回の外相会議では、ベトナムとマレーシアが南シナ海への懸念を表明したと報じられている。ベトナムは一貫して対中強硬姿勢を維持してきた国であり、マレーシアは昨年マハティールが首相に復帰して以来、前政権の対中傾斜を大きく強く軌道修正している。「懸念」の文言は、中国による南シナ海の軍事化の加速の前では無力と言わざるを得ないが、こうした国々が、南シナ海問題をめぐりASEANの中でどれだけ声を上げていくのか、行動を示していくのか、今後とも注目される。

 COCについては、早期策定に向けた具体的な日程が示された。声明では「相互に合意したタイムライン」とあるが、中国の李克強首相は昨年11月のASEAN首脳会議に際する関連会議で2021年までに妥結したいと表明している。今回の議長を務めたタイのドン外相は記者会見で、早期妥結が可能である旨、述べている。2021年よりも早く妥結もあり得るという話もある。

 しかし、ASEANと中国との間で昨年8月に合意されたとされるCOC草案は公表されていない。法的拘束力を持たないものになるのではないかとも言われている。中国は軍事活動通告のメカニズムも提案している。域外国と合同軍事演習を実施する場合、関係国に事前通告しなければならず、反対があれば実施できない、という内容である。例えば、ASEAN加盟国が米国と合同演習をしようとしても、中国が反対すれば、実施できないことになる。仮に、こういう内容のCOCになってしまっては、かえって有害と言えるかもしれない。

 南シナ海問題は、もはや地域の問題ではなくグローバルな問題である。航行と上空飛行の自由を確保するための主要各国の取り組みが重要であり、実際に、そのようになってきている。米豪だけでなく英仏など欧州の国も「航行の自由作戦」(あるいはそれに準ずる行動)を実施し始めた。英国のウィリアムソン国防相は、最近、シンガポールあるいはブルネイに基地を置くことについて言及した。南シナ海における英国のプレゼンスを維持するため、補給・維持修理の要員と補給艦を配備するということのようである。また、フランスも、インド太平洋の海洋秩序維持のため、日本との協力を進めつつある。
 

  
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