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2019年3月8日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 今年のアカデミー賞で最も注目を集めた作品は「ボヘミアン・ラプソディー」でも作品賞を受賞した「グリーンブック」でもない。最優秀監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3部門で受賞した「ROMA/ローマ」だ。理由はこの映画が従来の映画スタジオによる作品ではなくネットフリックス製作によるものだったため。

ローマのアルフォンソ・キュアロン監督(右から2番目・Shutterstock/Aflo)

 ネットフリックスを始めとする動画のストリーミングサービスは地上波のテレビ、ケーブルテレビや衛星テレビなどの配信会社、そしてハリウッドまでを斜陽産業に追いやった戦犯として扱われている。かつて米国人の余暇の過ごし方として「カウチポテト」という言葉があったが今や死語に近くなっている。特に若い世代では自宅にテレビを置かず映像視聴はPCやタブレットでストリーミングサービスを利用、という層がケーブルサービスなどでテレビ視聴、を上回るようになってきている。

 もちろんその背景にはネットフリックスなどストリーミングサービス側の営業努力もある。ネットフリックスではハリウッドの一流の監督、俳優を使い質の高い作品を送り出してきた。予算不足に苦しむハリウッドで仕事を見つけられない映画関係者にとっても大きな受け皿となってきた。

 短編作品が主流だったストリーミングサービスだが、最近は劇場にかけられる長編作品も増え、「ROMA/ローマ」はその代表格とも言える。そしてその作品がアカデミー作品賞を含む5部門にノミネートされ、3部門で受賞という快挙を成し遂げた。

物議を醸すスピルバーグ監督の発言

 しかし、これに噛み付いたのがスティーブン・スピルバーグ監督だ。以前からネットフリックスによる映像配信と劇場映画を同じ秤にかけるべきではない、という持論を展開していた監督は、「ネットフリックスをアカデミー候補作品から除外する新たなルール作りを支援する」と語り、物議を醸している。

 元々ハリウッドはギルドと呼ばれる職業組織で固められた小さなムラ社会だ。そこに属するためには様々なルールが存在する。劇場での観客動員数、収支などを公表しなければならない、というのもそのひとつ。映画作品は興行成績、制作費などにより成功か失敗かを即座に判断される厳しい世界でもある。

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