米国人IT技術者の論客、ハムザ
3月22日。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボからバスに自転車を積み込んでクロアチアの首都ザグレブに移動。ザグレブ中央駅近くの快適なホステルに投宿。
ラウンジで数人の欧米のバックパッカーとおしゃべり。そこにNY育ちの米国人IT技術者のハムザ君がジョイン。
ハムザはかなりの論客だ。コロンビア大学哲学専攻の米国女子と難解な数式を用いた哲学論を展開。その後ドイツ人学生と経済論を語っていた。
シャワーの順番を待っていたので中座して、シャワーを浴びた後でラウンジに戻って来ると、ラウンジの横のキッチンでハムザが1人で夕食を作っていた。他の連中は外に食べに行ったようだ。
コーランは現代の最先端科学の成果を予言していた?
ハムザは白人系(caucasoid)の風貌である。彼の家系はトルコ系とアイルランド系とその他の混血系という。父親がイスラム教徒であり彼もイスラム教を信仰している。
ハムザによるとコーランの教えは科学的であり、現代の最先端の科学でやっと証明されるような真実が1500年前に預言者マホメットにより語られているという。
例えば、コーランでは宇宙の天体の運行に関して、太陽が自転していることや、月が自らは発光せず太陽の光を反射していることが書かれている。ガリレオやケプラーより遥か以前に現代の天文学の水準に達しているというのだ。
なぜマホメットは1500年も前に天体の運行について知ることができたのか。ハムザによるとマホメットが神の啓示により科学的真実をコーランに残したからであるという。万物を創造した神だからこそ誤謬のない真実をマホメットに伝えることができたという論理である。
さらにハムザは数学の最新研究の成果がコーランに記載されていると数式を書いて説明してくれたが、残念ながらオジサンの知識領域の圏外であった。
25年前のイラン駐在時代にイランの英字新聞で読んだ“コーランの教えは現代科学で証明された”という連載コラムを思い出した。当時は宗教指導者のプロバガンダの一環であろうと読み飛ばしていたが、ハムザの話を聞きながら一理あるのだろうと考え直した。
ボスニア・ヘルツェゴビナは汚職国家?
ハムザは一年半ボスニア・ヘルツェゴビナの政府機関でシステム構築の仕事をしてきた。ハムザは職務上国家の機密に触れることも多く役人との接触が多い。役人の世界は汚職が蔓延しており、私腹を肥やすことに汲々としているらしい。
汚職取引に応じないと難癖をつけてパスポートを没収され、密室で脅された。ハムザは米国大使館に逃げ込んで保護を求めた。その後、モンテネグロに入国したが、一時警察に拘留された。
ハムザによるとそれぞれ独立国家となった現在でもセルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナの入国管理・警察・治安組織のシステムは繋がっている。それゆえボスニア・ヘルツェゴビナにおける“要注意人物”としての記録がモンテネグロで引っ掛かったとのこと。
どうも旧ユーゴスラビア社会主義連邦時代からの“怖いネットワーク”が人知れず残っているらしい。