今月の旅指南

2011年11月25日

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狩野直美 (かのう・なおみ)

東京生まれ。フリーライター。旅行業界誌の記者・編集者を経て、1994年からフリーランスに。主に海外旅行関連誌、ウェブマガジン等に記事を執筆中。

 島根半島の東端、美保関(みほのせき)に本格的な冬の到来を告げる風物詩ともなっているのが、毎年12月3日に行われる諸手船(もろたぶね)神事だ。『古事記』などに記載のある国譲り神話にちなんだ行事で、古式ゆかしい諸手船2隻が美保関港から漕ぎ出し、ときに「ヤアヤア」と掛け声とともに豪快に海水を掛け合いながら湾内を巡航する。

 「これは大国主命(おおくにぬしのみこと)が、美保神社の祭神となっている事代主神(ことしろぬしのかみ)(恵比寿様)に国譲りを打診するために使者を送った場面を再現しています。現在使用している諸手船は、もみの木で造られたくり船で、古代の造船技法を基に30年以上前に造られたものです」と語るのは美保神社権禰宜(ごんねぎ)の横山陽之(はるゆき)さん。

 諸手船神事で使者を務める船の舵子(かじこ)は1隻につき9名。舵取り役の大櫂(おおがい)、舵取りの補佐役の大脇(おおわき)、船のへさきに立てるマッカ(木の鉾)を持つマッカ持ち、そして漕ぎ手の檝子(かこ)に役割が分かれる。神事につく氏子は、1年かけて禊(みそぎ)を行い祭事に臨むが、乗船に際しては当日宮司が神籤(みくじ)をひき、名前を読み上げて指名する。

美保関にやってきた使いの船を再現した諸手船。互いに海水を掛け合い、先着を競う

 指名を受けた氏子総勢18名は2隻の諸手船に分乗、太鼓の音とともに海へと漕ぎ出し、美保神社の対岸にある、大国主命を祀った客人社(まろうどしゃ)の近くまで進み、海上から拝むと美保神社の方向に漕ぎ戻すことを3度繰り返す。

 2隻が競い合いながら港に戻ると、マッカを神前に捧げ、迎える宮司と問答となり、天の逆手(あまのむかいで)(拍手)を交わす。海上での神事の後は真魚箸式(まなばししき)と呼ばれる直会(なおらい)で幕となる。

 「やはりハイライトとなるのは海上での諸手船の競争、そして水を掛け合う場面でしょう。見学は岸からですが、古くから伝わる神事の雰囲気を味わっていただけるのではないでしょうか」

 諸手船神事と対をなすのが、国譲りを承諾した後、事代主神が船を傾けて榊の葉で垣根をめぐらせ、海中に身を隠した故事にちなんだ青柴垣(あおふしがき)神事。こちらは春の海を舞台に、毎年4月7日に行われる。

*木の包丁と箸で魚をさばく所作をするもので、古式の直会(祭事の後に供物を下げて酒食する宴)にあたるという。


諸手船神事
<開催日>2011年12月3日
<会場>島根県松江市・美保関港(境線境港駅からタクシー)
<問>美保神社 0852(73)0506
http://www.mihonoseki-kankou.jp/

◆ 「ひととき」2011年12月号より


 

 

 

     

 
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