“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年4月2日

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 2015年第8回ラグビーワールドカップイングランド大会。日本代表は世界ランク3位の南アフリカ代表(スプリングボクス)を相手に世界のラグビーファンの度肝を抜くような大逆転劇を演じてみせた。

 筆者はいちラグビーファンとして快哉を叫び、それを何度か「奇跡」という言葉を使って表現した。しかし、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)のもと日本代表に携わった選手やスタッフにとって、それは4年間の英知と努力の積み重ねによって手繰り寄せた結果なのだ。

 すべては周到なる準備によるもので、けっして奇跡が起きたわけではなかった。

 今回はセブンズのワールドカップやシックスネイションズ、ブレディースローカップなどの国際舞台で活躍し、エディージャパンではバックルームスタッフとして劇的勝利に貢献した日本初のプロレフリー平林泰三さんにお話を聞いた。

平林泰三さん(撮影:筆者、キャプションなしは以下同)

南ア戦のレフリーを徹底分析

――レフリーである平林さんがエディージャパンに関わっていたというのは、一般の人からすれば意外に思えるかもしれません。劇的な勝利を収めた南アフリカ戦の戦略をお聞かせ下さい。

平林:ジェローム・ガルセスというフランス人レフリーが南アフリカ戦の笛を吹くことになっていました。僕とはユースの頃から同じパスウェイで進んできた人で、U20ワールドカップにも一緒に参加している昔から知っている仲間です。

 僕の役割は彼の性格を含めたバックグラウンドにはじまり、レフリーとしてのテクニカルなもの、たとえばスクラムの反則をどういう基準で判断するのか、ブレイクダウンをどのようにレフリングするか、選手とのコミュニケーションをどのように取っているかなどを見ました。

 また、分析担当の中島正太さんと、ジェロームが吹いた過去の試合を検証してペナルティの数を調べました。スクラムが何パーセント、ラインアウトが何パーセント、アタック側に何回、ディフェンス側に何回というデータが出てきますから、僕はその内容をレフリングの癖まで含めて具体的に検証していきました。

 この分析はリーチ・マイケル選手を中心としたリーダーたちがゲームをマネジメントしていく中で生かされていきました。

――そういった緻密なデータ分析による戦略があってこその勝利だったのですね。エディージャパンではそういった役割を担っていたのでしょうか。

平林:2012年からエディージャパンの「黒子」として参加することになりました。

 具体的な役割は、ルールのアップデートとテストマッチのレフリー情報を得ることからスタートしました。その後、エディーさんがW杯に向け具体的にチーム作りを行う過程で「基本」「スキル」「規律」の3つの柱を掲げるのですが、その中で僕は「規律」を担当し、エディーさんと取り組んでいくことになりました。

 規律のプログラムは2012年にスタートして2013年、2014年と少しずつ変えながらW杯に向けて進めていきました。

――「規律」はチーム作りの根幹ともいえるものだと思います。もう少し具体的にお聞かせいただけますか。

平林:規律には二つのコンセプトがあって、一つ目はルールや規則を守ることです。もうひとつはチーム内の戦術などプレー上の約束事をきちんと果たすことでした。これらをチームの文化として落とし込んでいきました。

 ラグビーは反則数がゲームの結果を左右する大きな要素になります。ナショナルチームになれば3点の重みがとても大きいので反則数を減らすことがチームの強みになります。

 2012年シーズンから取り組み、2015年のW杯では1試合平均7.7という大会で一番反則数の少ないチームになり、その結果、日本代表はベストフェアープレー賞をいただきました。

 これはチーム作りの最初の段階からプログラム化して計画的に取り組んでいったものです。それがW杯本番で大きな成果として表れました。

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