世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年4月8日

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 中国共産党の習近平総書記は、3月21日から26日まで、ヨーロッパを訪問した。訪問国は、イタリア、モナコ、フランスの3か国である。中国の首脳がモナコを訪問するのは初めてであった。また、習近平がフランスに国賓として招かれている間に、マクロン大統領は、エリゼ宮にドイツのメルケル首相とEU委員会のユンケル委員長を招き、四者会談を行なった。国賓訪問で、二国間会談と多国間協議を同時に開催するのは異例なことだった。

(urfinguss/Ranta Images/AlexLMX/iStock)

 ローマでは、3月23日、習近平は、「一帯一路」構想の覚書に、イタリアのコンテ首相とともに署名した。欧州では、既に20か国(オーストリア、ポルトガル、ギリシア、ポーランド、チェコ、スロヴェキア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、スロベニア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、リトアニア、ラトビア、エストニア、マルタ、北マケドニア、アルバニア、モンテネグロ)が「一帯一路」に関する覚書に署名しているが、先進7か国(日米加英仏独伊)では初めてのことだった。

 今回の中伊両国の合意で、特に注目されたのが、中国が2つの海の拠点を得たことだった。1つは、イタリアの西の主要な港であるジェノバ港の整備を、中国が行う権利を得たことだ。そして、もう1つが、イタリアの東側に位置するトリエステ港周辺の鉄道の整備を中国が行うというものである。

 これによって、中国は、欧州における海と陸との重要な足場を築いたことになる。2016年4月に得たギリシアのピレウス港の運営権に続き、今回のイタリアのジェノバ港とトリエステ港での権益、そしてスリランカのハンバントタ港やアフリカのジブチの港での権益取得も考えると、中国は、世界の海の拠点を戦略的に狙っていることがわかる。もちろん、南シナ海での人工島造設も大きな海の足場作りである。

 陸路についても、中国は、既に欧州15か国49都市を結んで、貨物列車を走らせている。これによって欧州と中国との貿易が増加した。

 3月24日、習近平は、中国共産党総書記として初めてモナコを訪問し、アルベール2世公と会談を行なった。中国が、モナコから得た最大の利益は、現在米国から排除されているファーウェイ・テクノロジーズの5G導入地として、モナコの通信企業とファーウェイが合意したことだった。小国ではあるが、タックス・ヘイブン(租税回避地)として欧州の富裕層の集まるモナコ公国に拠点を得た中国。EU委員会やフランス等欧州諸国で、ファーウェイが国家の機密や個人情報を吸い取ってしまうのではとの懸念が広がる中、中国は、欧州の小国モナコに活路を見出し成功したのである。今回の習近平のモナコ訪問は、昨年のアルベール2世公の中国訪問に対する答礼訪問でもあった。モナコは海に面した美しい公国であり、そこには国際水路機関という日本も貢献している国際機関がある。世界の海運国の情報が集まり、海図や水路図の資料が豊富な所である。もしかしたら、中国はそんな所にも注目したのだろうか。

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