矢島里佳の「暮らしを豊かにする道具」

2019年4月13日

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矢島里佳 (やじま・りか)

株式会社和える 代表取締役

1988年東京都生まれ。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時である2011年3月、株式会社和えるを創業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、 “0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す。テレビ東京「ガイアの夜明け」にて特集される。日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を展開中。

「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いで、各地の伝統工芸の職人さんたちと一緒にオリジナル商品を生み出す矢島里佳さんが、日々の暮らしを豊かにする道具を紹介しつつ、忘れられがちな日本文化の魅力を発信していきます。

 お箸を正しく持てるようになったのは、いつの頃だろうか。幼い時からばってん箸で食べていた。正しく持ってみたいなぁとは思いつつも、あまり不自由も感じなかったため、なかなか直せず時は過ぎ……高校生の終わりから大学生頃。「美しくお箸を持てる大人はかっこいい!」、「日本人として、お箸くらい正しく持てるようになりたい!」と思いたち、特訓を始めた。何事も自ら意志を持って能動的に取り組むと、結果が出るのも早い。二十年近く正しくお箸を持てなかったのが嘘のようで、すぐに正しい持ち方に軌道修正された。

 それ以来、私はお箸で食べることが楽しくなり、お箸の便利さにも気がつくようになった。

Pinghung Chen / EyeEm

 例えばサラダ。フォークを出されることが多いのだが、サラダこそお箸の出番である。口に入り切らない大きさにカットされているレタスも、お箸でくるっと巻くと上品に口の中に収めることができる。お箸は取るだけではなく、食材を思い思いの大きさに、簡単に切ることができるところも素晴らしい。ナイフとフォークの役割を一人で二役こなせる、なかなかの優れもの。お箸とスプーンがあれば、大抵のものを食べられるのだ。

 と、それだけでも十分、日本人としての食の豊かさを享受している感覚だが、もう一歩毎日の食事を豊かにしてくれるお箸がいる。

 それが、漆塗りのお箸。

 漆を塗ったお箸で、ご飯を食べたことがあるだろうか。世の中には、様々なお箸がある。割り箸、プラスチックのお箸、金属のお箸……。しかしながら、意外と日本人の選択肢に入っていないのが、漆塗りのお箸なのだ。

お箸は「料理を口へ運ぶリレー」のアンカー

 私が漆塗りのお箸に出逢ったのは、お箸も上手に持てるようになり、日本人らしくなってきたぞと思っていた二十歳の頃。当時、JTBさんの会報誌-栞-で連載をさせていただいていた。その際に取材で訪れた、兵庫県姫路市の漆職人さんがきっかけだった。取材の後、「このお箸を使ってから記事を書いてごらん」

 とおっしゃっていただき、漆塗りのお箸を一膳、ありがたく頂戴した。

写真提供:筆者 写真を拡大

 早速お家でそのお箸でご飯を食べると……違う!ご飯の味わいが違うのだ。私は今までなぜ、漆のお箸でご飯を食べていなかったのだろうか。1日3回、80年生きたら8万7600回、ご飯を食べるのだが、その1回1回のご飯はもちろん美味しいに越したことはない。料理の腕や食材の質感に目がいきがちだが、その肝心の料理を最後、口へ運ぶリレーのアンカーがお箸ではないか。そのお箸へのこだわりを持たずして、生きているのはもったいない!

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