矢島里佳の「暮らしを豊かにする道具」

2019年4月26日

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矢島里佳 (やじま・りか)

株式会社和える 代表取締役

1988年東京都生まれ。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時である2011年3月、株式会社和えるを創業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、 “0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す。テレビ東京「ガイアの夜明け」にて特集される。日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を展開中。

 3時のおやつ。お菓子をいただくときに欠かせないのが、お茶。

 みなさん、どんな急須でお茶を淹れているだろうか。

写真提供:筆者 写真を拡大

 と、その前に、そもそも家で急須を使ってお茶を淹れて飲んでいるだろうか。近年はペットボトルのお茶が普及し、急須でお茶を淹れる方法がわからない日本人が増えているというから、少し寂しさを感じる。ペットボトルのお茶の利点は、いつでもどこでも蓋を開けたら、すぐに飲めることだろう。その点は大変便利だが、長期保存して流通させるために、どうしてもビタミンCが入ってしまうのが難点。私はどうも、ビタミンCの味が気になってしまい、お茶本来の味を楽しむことができないので、家では必ず急須でお茶を淹れている。

暮らしを豊かにしてくれた「萬古焼の急須」

写真提供:筆者 写真を拡大

 20歳の頃、雑誌の取材の仕事でお伺いした三重県四日市市の萬古焼の職人さんとの出逢いが、私の人生を変えた。取材のあと急須を買って帰り、家で使い始めて驚いた。急須でお茶を淹れる時、いつも気になっていたのが、なぜだか急須からお茶が少しこぼれてしまうこと。仕方なく布巾を常備して、こぼれるのを前提に急須と付き合っていた。しかしながら、それは急須側に問題があった。蓋と注ぎ口の精度が低いので、こぼれていたのだ。私が出逢った萬古焼の職人さんの急須の注ぎ口は、「こんなにも心地良いのか!」と、感動するほど水切れが良い。

 この急須に出逢ってから、お茶がこぼれるストレスがなくなり、お茶を楽しむことに集中できるようにもなった。職人さんが細部にまでこだわった急須に変えたことで、毎日の暮らしが心穏やかに、豊かになるという感覚を実感し始めた。たかが道具、されど道具。暮らしの豊かさは、道具ひとつで変えられるのだ。

写真提供:株式会社和える 姫路『aeru room』 写真を拡大

 萬古焼は今から約300年前に始まり、地元で採れた紫泥の土で作られている。紫泥の土は、鉄分を含んでいる赤土粘土。半磁器と言われ、石と土が混ざっているのが特徴。還元焼成を行い、釉薬をかけずに焼締める。紫泥の土は緑茶の渋みをとり、まろやかにしてくれるとも言われている。

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