WEDGE REPORT

2011年12月8日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

 逆にEUは、これまで京都議定書の第二約束期間設定の可能性を交渉上のカードとして使いすぎてきたがゆえに、途上国の期待値を上げすぎたことが致命的な結果を招く危険にさらされている。前回の記事にも指摘したが、途上国からは「死にそうな京都議定書に、EUがとどめを差すつもりか」と迫られている。孤立しているのは日本ではなく、むしろEUなのだ。EUのヘデゴー委員は、ここ最近になって、「EUだけが第二約束期間を設定しても、世界の1割強しかカバーしていないので、意味がない。新たな枠組みに新興途上国が入ることが重要」などと、昨年から日本が主張してきたことと全く同じことを平然と言い始めた。去年日本を非難したことを、全く忘れたかのようである。ただ、日本と違うのは、EUは京都議定書第二約束期間に入る可能性のある最後の国になってしまったということだ。結局、EUは第二約束期間を設定する条件として掲げた「すべての国が参加する次の枠組みに向けての明確なタイムスケジュール」などの点を取り下げて(何の外交的成果もなく)、少なくとも政治的には第二約束期間についての言質を途上国に与えざるをえないだろうという見方が現地では主流になっている。

アフリカのリーダーになりたい
議長国・南アの思惑

 一方、議長国の南アが抱える事情はこうだ。南アはナイジェリアとアフリカのリーダーを競っており、ナイジェリアが民族独立派だと誇りを持っている一方、南アは旧宗主国の影響が残る旧植民地代表として見られがちであり、そのイメージを払拭しようとしている。特に、現在のズマ大統領は、これまで大統領と違ってローカルな政治家であるため、余計にその意識が強い。そうした事情から、今回の会議が失敗に終わってしまえば、南アはアフリカのリーダーになれるだけの外交力がないとみなされるという意味で致命的であるため、何とかまとめなければならない。しかしだからといって、先進国つまり旧宗主国に近寄った形で会議をまとめるということも極力避けなければならないのである。

 とすれば、南アにとってのベストシナリオは、旧宗主国が含まれるEUから譲歩を勝ち取って京都議定書を守りきったという外交成果を演出することである。EUが、上記の状況で京都議定書第二約束期間の設定について、わずかながらでも何らかの譲歩案を示せば、議長国としてはそれで充分であり、それ以上に、(EUを含む)先進国が望む「新たな枠組み」に向けての道筋をつける外交的努力をするモチベーションは一挙にしぼんでしまうだろう。

 こうした全体の構図を考えると、ダーバンでのCOP17の出口は、野心的な成果が得られるという期待は小さく、スモールパッケージをまとめることになってしまうのではないだろうか。日本は、こうした中で「孤立」も「苦しい立場」にも追い込まれることはない。ただし、唯一の注意点は、EUが最後に日本を道連れにしようとしないかということだ。上記のような日本にとって恵まれた外交的状況のなかで、もしそうしたEUのアッパーパンチを食らってしまうなら、それこそ日本の外交的大失敗ということになろう。

*関連記事:速報 ダーバンCOP17 日本に恨み抱くEUの苦境

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