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2019年7月2日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 4月から外国人労働者の受け入れが拡大した中で、森興産(本社大阪市中央区)という会社が、日本での生活に不慣れな外国人留学生に対してきめ細かい就職サポートを行っている。

 ステンレス流通が本業の森興産を含む豫洲グループが、海外進出して外国人材を雇用しようとした際に、日本の大手人材仲介会社に依頼してもふさわしい人材を獲得できなかった。このため7年前に日本に来た外国人留学生の人材育成、就職サポートを進める事業をグループホールディングス機能をもつ森興産の中で開始した。

(yopinco/gettyimages)

「出口がない留学生」

森隼人社長

 これまで関西を中心に、企業向け研修やウエッブサイトの制作などを手掛けてきた。留学生の就職支援ビジネスを推進してきた森隼人社長は「大学や専門学校は留学生を増やそうと入口は広がっているが、出口(就職)がない。現状では留学生のうち35%しか就職できておらず、残りの65%は就職できずに帰国せざるを得ない」と、日本に来た留学生の就職希望が叶えられていない現状を明かす。

 大学や専門学校は、学生に対して就職のためのガイダンスは行ってはいるが、日本語での説明のために留学生がその内容を理解できず、日本企業の就職習慣や就活方法が分からないため、就職の機会を失っているケースが多くあるという。

 外国人留学生をめぐっては、最近、東京福祉大学で過去3年間で1600人を超える留学生の行方が分からなくなるという、大学のずさんな管理体制が明らかになった。この大学では「研究生」という名目で、定員を超える多数の留学生を入学させていた。政府が2008年に策定した「留学生30万人計画」実現のために、外国人留学生を受け入れるのは良いとしても、急激に増加したこともあって、大学側が留学生の生活、就職指導まで行う余裕がないのが実態のようだ。

 地方の場合は入学した留学生に対するフォローが少ないため、留学生が孤立するケースもある。こうした状況にならないように、森興産では留学生をつながるネットワーク「WA.SA.Bi.」(ワサビ)を作り、留学生同士が友達を作り交流できる機会も設けるなどして、日本での生活、就職を支援してきた。

WA.SA.Biについて講演を行う森社長

企業、行政、大学と連携

 さらに、森興産は外国人材が欲しい企業、行政、就職させたい大学・専門学校の産官学とネットワークを組んで連携し、就職に関するセミナーやイベントを積極的に開催している。中小企業や大学をこまめに回り、留学生の就職希望を聞いて、人材が欲しい企業への橋渡しをしている。

 同社が行政機関からの受託したケースでは、大阪府から外国人留学生向けの就職対策講座、近畿経済産業局から大阪府労働協会を通じて留学生向け就活セミナー、自治体国際文化協会が進めている日本と外国人との相互理解を深めるための外国語教育(JETプログラム)、異文化理解セミナー、就活セミナーの開催などがあり、主にキャリアアップや就職活動、ビジネスマナーなどについてアドバイスなどをしている。

 昨年5月1日現在の日本で学ぶ外国人留学生の総数は、日本学生支援機構(JASSO)によると29万8980人。この数年は着実に増えており、今年中には政府が目標としてきた年間30万人の達成は確実とみられる。就職しているアジアの国別では中国人が最も多いが、最近ではベトナム人が急増、ネパール人も増えているという。しかし、日本での生活習慣を全く知らないため、日々の生活や学業で戸惑うことも多い。

 法務省は生活者としての外国人を支援するため、地方公共団体に一元的窓口に係る支援制度の創設を求めて、11カ国言語に対応した窓口を全国に約100カ所整備するとしているが、3月末現在37カ所しか申請されておらず自治体側の対応が遅れている。このため、森興産のような民間の支援も必要になりそうだ。

 昨年、電子部品大手の村田製作所からのオファーを受けて、森興産が就職イベントを企画、運営し、20人以上に内定が出たという。これまでは関西系の企業への留学生の就職仲介が多かったが、今後は東京地区でも積極的にサポート活動を展開する考えだ。

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