オトナの教養 週末の一冊

2019年5月24日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 「アメリカの食=ファーストフード」というイメージがある一方、さまざまな国からの移民の流入により、新しい独自の食文化が生まれている。食を切り口として見ると、アメリカとは一体どんな社会なのか。『食の実験場アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』(中公新書)を上梓した慶應義塾大学法学部、鈴木透教授に、現在のアメリカでの食の潮流やその背景、食から見たアメリカ社会などについて話を聞いた。

(bhofack2 / iStock / Getty Images Plus)

――アメリカの全州で食事をしたことがあるとのことですが、最近のアメリカで流行っている食とは何でしょうか?

鈴木:近年アメリカではラーメンが流行しています。日本的なラーメンだけでなく、麺にほうれん草などの野菜を練り込み、野菜をふんだんにトッピングした、ビーガンのラーメンも登場しているほどです。日本では、ラーメンにヘルシーなイメージはあまりないかもしれませんが、アメリカではおしゃれでヘルシーな食といった認識です。かれらにとってラーメンはヌードルスープという感覚なのです。

 こうした傾向から読み取れるのは、国境の外のエスニック料理がアメリカでさらに別の形に進化しつつある姿です。エスニックとヘルシーのクロスオーバーはその一例です。ビーガンの人たちの間では、ブッダボウルというものも登場してきました。ボウルは日本語で言えば丼を意味し、玄米などの全粒粉穀物をベースに、豆類などの植物性蛋白質、野菜や果物を加えたものがブッダボウル。玄米、豆腐、アボカドといった組み合わせの奇想天外な丼も登場しているのです。

 エスニックからヘルシーへという展開と並んで注目されるのは、いくつかのエスニック料理の要素を国境横断的に融合したフュージョン料理の登場です。フュージョン系レストランは決して安くありませんが、庶民向けにフードトラックなどで提供されるラップは比較的安価です。ラップは、メキシコ料理のトルティーヤのなかに西洋料理やアジア系の食材などさまざまな具材を自由に組み合わせて包んだものです。

 所得階層を問わずアメリカの食全般に、国境の外の食文化への接近が見られ、従来の画一化されたファーストフードを超えた、新たな食の実験が始まっているのです。

――アメリカは各地にチャイナ・タウンがありますが、そこでの中華料理とは違う文脈でラーメンが流行っているのでしょうか?

鈴木:チャイナ・タウンで提供される中華料理は、基本的にアメリカへ渡ってきた中国系の人たちを主な顧客としてきました。もちろん、それ以外の人たちが来るようになって、アメリカ人向けにアレンジされてはきましたが、基本的に中国系の人たちのなかで消費されてきた。だから、中華料理が一般的なアメリカの家庭料理に入り込んだかと言えば、必ずしもそうではないのです。

 現在のアジア食やフュージョン系料理の流行の最も重要なヒントになっているのは、むしろ、スシをはじめとする日本食です。他にパクチーを使ったタイ料理など東南アジア料理の影響が見られますが、中華料理以外のアジア料理の存在感がアメリカでは増しています。

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