野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2019年6月26日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

 6月28−30日に開催される主要20カ国首脳会議(G20)を前に、逃亡犯条例改正に反対する香港の若者たちは、今度は会場となる大阪で日本や国際社会に向けて香港問題を訴えるため、集会やデモなどのアクションを起こすことになりそうだ。中国側は、香港問題をG20の場で取り上げることを拒否する姿勢を示しているが、習近平・中国国家主席が来日し、米中、日中などの首脳会談も予定されており、香港の一国二制度の危機に対する中国指導部の責任をできるだけ世界に向けてアピールしたい構えだ。

 

 現在予定されているのは、G20前日の27日夜7時から、大阪・難波の高島屋大阪店前に集合し、容疑者が中国に移送されることを可能とする条例改正に対して強い不安を感じる香港人ひとりひとりの思いを道ゆく人々に語りかけることにしている。

日本の皆さんにも関心を持ってもらいたい

 27日夜の集会の名称は「香港の自由と民主主義を守る行動」。若者たちは自発的にSNSなどで知り合った仲間同士で声を掛け合っており、現在のところ、参加者の数は未定だが、日本に暮らしている全国各地の香港人留学生や日本定住者に加えて、香港からも駆けつけるとしている若者も少なくない。集会の主催者側は、香港問題に関心を持つ日本人の参加も期待している。同様の集会は今月13日に東京・渋谷でも開催され、2000人が集まる賑わいを見せた。また、別のグループは28日に大阪でデモを行う計画があるという。

 欧米各国は香港情勢について相次いで懸念を表明しているが、日本政府は沈黙を守っている。集会を計画した香港人留学生の男性は、取材に対して「200万人が街頭で声をあげて十分かと思っていたけれど、これまでの香港政府の対応は何もしてないに等しいと思います。そうした私たちの声を世界に響かせたい。逃亡犯条例の改正で香港の自由が失われ中国と一体になってしまうと、次は台湾、そして日本にも中国の影響力が及んでいくので、日本の皆さんにも香港問題に関心を持ってもらいたい」と話している。

写真:ロイター/アフロ

習近平も参加するG20で「香港問題」を

 逃亡犯条例の改正に反対するデモの圧力を受け、香港政府は一連の対応に対して市民へ謝罪するとともに、改正案審議の中断を表明している。これを事実上の廃案と受け止める向きもあるが、香港の若者たちは今後、反対運動が沈静化したところで再び、改正作業が動き出すのではないかと心配しており、香港政府の対応を受け入れていない。

 香港の民主派らの間には、改正案の即時廃案のほか、キャリー・ラム行政長官の辞任、民衆の行為を「暴動」と位置付けたことの撤回、逮捕されたデモ参加者の釈放などを求める声が上がっている。21日には香港の警察総署を取り囲む若者らを中心とする数万人のデモが起き、警察側と一触即発の状況が生じている。

 200万人デモを主催した香港の民主派グループでは、当初、次の週末である7月1日にも大規模デモを主催することを計画しているが、26日にも抗議活動を行うと香港メディアは報じている。G20に合わせて、香港政府と中国政府にプレッシャーをかけると同時に、習近平氏も参加するG20の場で香港問題が取り上げられる可能性に賭け、「香港人はまだ安心できていない」(集会の主催者)ことをアピールしたい構えだ。

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