今月の旅指南

2012年1月27日

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狩野直美 (かのう・なおみ)

東京生まれ。フリーライター。旅行業界誌の記者・編集者を経て、1994年からフリーランスに。主に海外旅行関連誌、ウェブマガジン等に記事を執筆中。

 全国に数ある火祭りの中でも、その勇壮さで知られるのが、和歌山県新宮(しんぐう)市のお燈(とう)まつりだ。祭りの舞台となるのは熊野速玉(はやたま)大社の摂社、神倉(かみくら)神社。高さ100メートルの断崖絶壁に建つ社殿は538段の急勾配の石段を上ったところにある。祭りでは、白装束に身を包んだ男衆が祈願を書いた松明(たいまつ)を手に、この石段を駆け下りてくる。まさに、地元で唄われる新宮節の“山は火の滝、下り龍”と呼ばれる光景が展開する。

上り子の持つ松明の炎で、あたり一面火に包まれる
写真:和歌山県観光連盟

 子どものころから毎年祭りに参加している、新宮市商工観光課の津越紀宏(つこしのりひろ)さんによると、

 「松明を持った祈願者は“上り子(のぼりこ)”と呼ばれ、子どもから年配者まで毎年2000人ほどになります。最近では遠方からの参加者も増え、前回は2400人が参加しました。火を使うだけに血が騒ぐお祭りですが、参加すると心が一新される思いがします。一番寒い時期の祭事なので、地元ではお燈まつりが終わると春がくるといわれています」

 祭りの当日、上り子の一部は海で禊(みそぎ)をし、白装束に着替えた後、阿須賀(あすか)神社、熊野速玉大社、妙心寺の順に参拝を済ませて、神倉神社の本殿および石段の中腹にある中之地蔵で待機する。宮司が火打石で斎火(いむび)を作り、その明かりで祝詞(のりと)が読まれた後、点火された大松明は中之地蔵まで運ばれる。それぞれの松明に火がつくと、すべての上り子が本殿に集まり、いったん鳥居の門が閉じられる。しばらくして門が開くと、上り子が一斉に石段を駆け下りる。松明の火はそのまま自宅に持ち帰って、灯りにしたり、台所の火として使用するのが昔ながらのやり方だ。

 「祭り当日、女性は入山できませんが、麓にある太鼓橋の辺りを、石段を下ってきた上り子が通り過ぎるので、祭りの活気を肌で感じることができます。“下り龍”の全景を見るなら、少し離れた国道からがよいでしょう」

 燃える炎の男の祭り。身支度一式を準備すれば、当日飛び入り参加もできるそうだ。


お燈まつり
<開催日>2012年2月6日
<会場>和歌山県新宮市・神倉神社(きのくに線新宮駅下車)
<問>新宮市観光協会 0735(22)2840
http://www.shinguu.jp/

◆ 「ひととき」2012年2月号より


 

 

      

 
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