オトナの教養 週末の一冊

2019年7月5日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周著、光文社、2017年)をはじめ、ビジネスとアートのつながりが注目を集めている。しかし、アートと聞いても敷居が高いと感じ、どう見れば良いのかわからない方も多いだろう。『絵を見る技術』(朝日出版社)を上梓した美術史研究家の秋田麻早子氏に、アートが注目を集める理由、絵を見るという行為などについて話を聞いた。

(IKvyatkovskaya / iStock / Getty Images Plus)

――昨今、ビジネスとアート、または地域活性化のためのアートフェスティバルなど、これまで敷居が高いと感じられていたアートが身近になってきています。この現状を専門家としてどう見ていますか?

秋田:ダニエル・ピンクが『ハイ・コンセプト 「新しいこと」を考える人の時代』(三笠書房、2006年)のなかで「MBAよりMFA」と訴えていたのが最初だったように記憶しています。ビジネスパーソンには、経営学修士号のMBAより、MFA(美術学修士)、つまりアートが必要だという意味です。

 その後、山口周さんの著書をキッカケに現在のような現象が生まれたのではないかと考えています。その前提として、閉塞感が覆う日本経済を打破できるのは、もはやビジネスの知識ではなく、ビジネスとはまったく関係がないと考えられていたアートの力なのではないか、という期待があるように感じます。

 また、以前は「アート」と言えば、ルーベンスなどの巨匠たちが描いたハイアートが「アート」と認識されていましたが、現在はアートと呼ばれる対象も広がったのに伴い、さまざまな方々が興味を持つようになり、各地のアートフェスティバルも盛り上がりを見せているのではないかと思いますね。

――秋田さんは実際に絵を見る技術を学ぶイベントを開講していますが、ビジネスパーソンは「アートをビジネスに活かしたい」という考えで受講するのでしょうか?

秋田:4年ほど前にはじめた頃は、ビジネスに活かせる知識を得たいのだろうと思っていたのですが、蓋を開けてみるとそうした実利的なものよりも、純粋に「絵を見たい」「絵がわかるようになりたい」と素直な欲求で受講されている方が多いので驚きました。まさか絵の見方について、これほど需要があるとは思ってもみなかったので。

――その絵の見方について、本書では特に構造に焦点が当たっています。これには理由があるのでしょうか?

秋田:アートや絵の見方は大きくわけて2つあります。ひとつは、絵を見ただけで分かることを、ちゃんと見る方法。線や形や色がどうなっていて、構図がどう設計されているか、つまり絵のデザインの見方です。

 もうひとつは、見ただけではすぐに分からないことを、比べたり調べたりしながら見る方法。作品の社会的意義や歴史的変遷の中での意味など文脈から理解する見方です。世の中には、文脈の面から作品を解説した本が多く出ているので、今回は意図的に構造に焦点を当てました。作品を見るには、本来どちらか一方ではなく、両方の知識があることが望ましいのです。

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