2024年4月27日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2019年3月22日

 著名人が公表したり、メディアで度々取り上げられたりと広く知られるようになった発達障害。しかし、発達障害の傾向はあっても診断が下りず、いわばグレーゾーンで苦しんでいる人たちがいる。『発達障害グレーゾーン』(扶桑社)を上梓し、ご自身も発達障害当事者であるフリーライターの姫野桂さんに、発達障害とは何か、かれらとの接し方などについて話を聞いた。

(Motortion/iStock/Getty Images Plus)

――ここ数年、発達障害という言葉が話題になることが多くなりました。ひとつの「ブーム」とも言えるとも思うのですが、発達障害当事者として現状をどう見ていますか?

姫野:良い面と悪い面があるように思います。良い面としては、発達障害そのものが世間に広く認知されるようになったことで、これまで努力不足で仕事や勉強で力を発揮できなかったと思われていた当事者の方々が、発達障害かもしれないと気がつくことができるようになったこと。

 その一方で、発達障害の当事者が集まる会にマルチ商法や新興宗教の信者が紛れ込み、後日勧誘されるケースがあるとも聞きますADHD(注意欠如多動性障害)の方々は、人当たりがよく、いつもニコニコしている人が多かったり、ASD(自閉症スペクトラム症)で物事を客観的に捉えられない傾向がある人は標的にされやすい。また、なにかあれば「お前アスペ(アスペルガー症候群)なんじゃない?」などと茶化す人が出てきたのは悪い面ですね。

――姫野さんご自身も発達障害と診断されているわけですが、そもそもどのような経緯で発達障害であることが判明したのでしょうか?

姫野:就職活動の際に、SPI(多くの企業が採用する適性検査)というテストを受けることが多いのですが、どう頑張っても数学の点数が低かったため、やむなく数学が得意な友人に指導してもらいました。しかし点数が上がることはありませんでした。当時は仕方がないと思いSPIテストがない企業の一般職に就き3年ほど働きました。その後、フリーライターとして働き詰めになった末過労で倒れ、心療内科を受診した際に受けた心理検査で発達障害と診断されたんです。

――基本的なこととして発達障害とは、どんな病気なのでしょうか?

姫野:生まれつき、つまり先天的な「脳の偏り」「能力の偏り」で日常生活や仕事に支障をきたす障害です。もちろん先天的な病気ですから、治ることはありません。

 一口に発達障害と言っても、注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)の3種類にわけられます。ADHDは、注意が散漫になり集中力を欠き、仕事上では記入漏れが多いなどの特徴があります。ASDは、本音と建前、比喩が理解できなかったりとコミュニケーションに問題を抱える特徴があります。LDは、知的な問題がないにもかかわらず、読み書きや計算が苦手です。私の場合は、このLDのために数学ができなかったのです。

 ただ取材をしていて感じるのは、人それぞれ程度の差はあれ、ADHDとASDが混ざっている場合が多いですね。


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