田部康喜のTV読本

2017年6月22日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」(5月21日)は、発達障害に対して最新の科学の成果を紹介するとともに、障害者の視点からこの世界がどのように見えて、どのように音が聞こえるのか、映像とアニメ、音声を駆使して障害者の苦痛に共感を呼ぶ。テレビがまだまだ切り拓く可能性のある、メディアであることを感じる。

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 発達障害は、3つの症状からなる。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)。それぞれの障害の程度は個人によってさまざまであり、かつこれらの障害が重なりあっている人もいる。

 番組は、障害者の日常を追う一方で、欧米の研究者から最新の成果をインタビューによって織り込んでいる。スタジオの司会は、「あさイチ」のキャスターである、井ノ原快彦とアナウンサーの有働由美子。ASDの障害者の立場から、片岡聡(大学院卒業後に就職、10年前に診断を受ける)と綾屋紗月(東京大学特任研究員)が参加した。

 発達障害は、小中学生の15人に1人がいると推定されている。大人の障害者が増え、障害者の側からどのように世界が見え、聞こえるのか、的確に表現され、発達障害に対する最先端の科学のメスが入るようになってきた。

感覚過敏はどのようなものか、実際に体験する

 障害者の視点からみると、感覚過敏が社会生活を困難にしている。

 ASDの河髙素子(18)は定時制高校に通っている。感覚過敏がどのようなものなのか、有働は外出に同行して確認していく。歩道を歩いていると、ちょっとした自転車のベルや子どもの泣き声が、河髙には大きな音に聞こえるという。診断されるまでは、「まわりもうるさいなかで暮らしていると思っていた」という。

 喫茶店で有働と話をする。店内はお客の主婦や子どもの声にあふれている。河髙と向き合って座った有働が「聞こえますか?」と問う。

 河髙の体験に基づいて制作したビデオは、周囲の音に有働の声がかき消されているようだ。

 スーパーの店内に入る。河髙は「15分が限度だ」という。「キーンとか、シャーとか、ゴ―とか音が絶えず聞こえて疲れる」と。その音は野菜の陳列ケースの下の冷蔵装置の音であり、蛍光灯の音だという。

 それでは、なぜ感覚過敏は起きるのか。ロンドン大学の教授(認知神経科学)のフランチェスカ・ハッペはいう。

 「これは仮説だが、脳には司令塔があって、聞きたい音声以外は小さくする慣れの機能が働く。その結果として聞きたい音が聞こえる。しかし、ASDの障害者はこの慣れの機能が働かずに、脳が混乱状態に陥っている」

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