風力発電事業が赤字だらけの理由

WEDGE2月号 第二特集


斉藤純夫 (さいとう・すみお)  ウィンドコネクト代表取締役

ウィンドコネクト代表取締役。エネルギー会社で19年間勤務の後、2011年4月に独立。風力発電を中心に、自然エネルギー事業に関する金融機関のコンサルティング及び地域主体プロジェクトの後方支援を行う。前職では化石燃料、電力ビジネス(IPP、PPS、コジェネ、省エネ、空調)などエネルギー全般の経験を持つ。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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今年7月から、風力で発電された電気が、固定価格で買い取られる制度がはじまる。
だが、足元の風力事業は度重なる失敗で危機的な状況に陥っている。
発電設備の能力を重視することを改め、発電量を稼ぐことに注力しなければならない。
WEDGE2月号第二特集『風力発電 空回りの理由』より)

風力発電事業が赤字だらけの理由

 固定価格買取制度がいよいよ導入される。風力発電も花開く時。しかし、肝心の風力発電業界は自治体も民間企業も故障などで赤字、不採算で苦しんでいる。風力専業のベンチャーでは老舗であったエコ・パワー(東京都品川区)は、荏原製作所の子会社になった後も経営が芳しくなく、コスモ石油が買収した。東証マザーズに上場している日本風力開発(東京都港区)も赤字に苦しみ、有価証券報告書に継続疑義の注記が出る異常事態だ。クリーンエナジーファクトリー(CEF・北海道根室市)は2010年、日本風力開発に続きマザーズに上場する計画であったが、現在は一部の風力発電所を売却する事態に至っている。

 風力発電はそれほどまで利益を上げにくいビジネスなのだろうか? この問題を考えてみよう。

 固定価格買取制度が導入される以前は、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」に基づきキロワットアワー(kWh)当たり10円前後の買取価格であり、確かに収益性は取りにくい側面はあった。とはいえ、風力発電のビジネスでは、(1)燃料代がかからない、(2)15年、17年といった長期で電力会社と契約できる、(3)風況に基づく想定発電量は長期ではぶれが小さい。これらのことを考えると、きちんと計画したプロジェクトでは火力発電のような燃料代変動リスクもないことから、不採算になることは起きにくいビジネスだ。

 そのことが世界では認められているからこそ、企業与信ではなく、プロジェクトで得られる売電収益を与信の基本と考えるプロジェクトファイナンスが主流となっている。買取価格が安いことと深刻な赤字になることとは本来結びつかない。

 それでは、失敗の原因は何か。上手くいかない風力発電所を運営する自治体、民間事業者を多数解析してきたが、明確なのは事業計画の甘さ、17年間(法定耐用年数)風車を計画通り運転させるという意識の希薄、そのようなものを強く感じる。また風況が必ずしもよくない場所であったり、風車間を異様に詰めていたりする発電所も目立つ。

 例えば、ユーラスエナジー(東京都港区)。業界最大手であり海外でも多数実績を持つ。元々はトーメン系であったが、その後東京電力の子会社となった(11年10月豊田通商が子会社化すると発表)。同社は、北海道稚内市の宗谷岬ウインドファームのように、風況の良い場所での実績もあり、失敗事例だらけという事業者ではない。ただ、09年、島根県出雲市に建設した日本最大でもある新出雲風力発電所(7.8万kW)では異常事態となっている。風車の羽根(ブレード)が支柱(タワー)に接触するなど重大事故が起きるなどし、未だ本格的な稼働に至っていないようだ。

 なぜ、このような事態が起きたのか。過去の経緯など事象を丁寧に追っていくと問題点が見えてくる。新出雲の計画は、もともとユーラスエナジーの開発ではない。ゼネコンが開発した案件にユーラスが途中から参画している。

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著者

斉藤純夫(さいとう・すみお)

ウィンドコネクト代表取締役

ウィンドコネクト代表取締役。エネルギー会社で19年間勤務の後、2011年4月に独立。風力発電を中心に、自然エネルギー事業に関する金融機関のコンサルティング及び地域主体プロジェクトの後方支援を行う。前職では化石燃料、電力ビジネス(IPP、PPS、コジェネ、省エネ、空調)などエネルギー全般の経験を持つ。

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