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2019年7月18日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)、近著に『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)など。

 米中の覇権争いが新たな戦場で繰り広げられている。海の底だ。ほとんどの国の経済、そして安全保障に不可欠な存在となっている〝海底ケーブル〟を巡って米中は覇権を競っている。

 データ通信、つまり我々の生活に不可欠となった携帯電話による通信・メールや金融取引の情報などは、1990年代には、衛星通信と海底ケーブルの通信量シェアはほぼ同等だった。ところが、スマートフォンの爆発的な普及などで大容量のデータ需要が一気に増すと、安定して大容量のデータを送れる海底ケーブルの比重が加速度的に高まったのである。

 現在、世界を駆け巡っている通信・データのおよそ99%が、ある所では深さ数千メートルの海底に眠るケーブルから流れている。

 この海の底に引かれた通信網を通じて国家の存在を左右するような軍事情報、経済情報、金融情報などが流れている。つまり、この海底ケーブルを支配した国が全世界の情報を握ることになるのだ。

 それは、いわば〝情報戦略の一帯一路〟を宣言するにも等しい発言だった。2015年1月、世界経済会議(通称ダボス会議)に出席した中国の首相、李克強は、会場を埋め尽くした世界の要人を前にして、こう宣言したのだった。

 「中国は世界で進めている一帯一路戦略の一環として、中国の通信関連企業の海外進出を国家として後押しする」

 国家主席、習近平が「一帯一路」経済圏構想を掲げてから1年後のことだった。

今年4月に北京で開かれた第2回一帯一路フォーラムには150を超える国が集まった (GETTYIMAGES/KYODO NEWS)

 このダボス会議での首相発言からおよそ2カ月後の3月28日、国家発展改革委員会、外交部、商務部の連名で「一帯一路」のアクションプラン、「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの共同建設推進のビジョンと行動」が発表される。

 中国の国家としての意思、通信分野での覇権を握る、がより一層明確となる。具体的には、国際通信レベルをあげるため、陸上での国境を越えての光ファイバー網の構築、衛星通信環境の完備、そして大陸間の海底ケーブルの構築だった。

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