WEDGE REPORT

2019年7月18日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)、近著に『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)など。

オール中国で挑む
陸海空における通信覇権

 国家の掲げる御旗に中国企業は一斉に走り始める。

 「一帯一路沿線を皮切りにTD−LTE(携帯電話の通信規格)の海外進出を促進したい」

 世界最大の携帯電話事業者である中国移動通信(チャイナ・モバイル)の代表、奚國華の言葉だ。同社は77万基のTD−LTE基地局を構築し、世界全体の40%を占める。

 また中国衛星通信集団はこれ以降、相次いで通信衛星を打ち上げ、すでに一帯一路全域をカバーしているとも言われている。

 そして、海底ケーブル。

 香港に端を発し、ベトナム、マレーシア、ミャンマーといった国々に接続しながらインド洋を横切り、インド、パキスタン、カタール、UAEなどにも支線を延ばし、中東、アフリカと欧州を結ぶ紅海の底を這うように延びては、スエズ運河を越え、地中海に達するや、そのケーブルはギリシャ、イタリア、そしてフランスに達する。実に2万5000キロ余りの海底ケーブルが「AAE−1」(アジア・アフリカ・ユーロの略)と呼ばれているものだ。運用は17年から始められた。

2017年に運用開始した海底ケーブル (出所)Submarine Networksの資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 実際のケーブル敷設工事の一部を行ったのは世界を代表する敷設技術を持つ日本のNEC。欧米企業も数多く出資しているこのプロジェクトには、中国を代表する中国聯合通信(チャイナ・ユニコム)も参加していた。同社は中国移動通信(チャイナ・モバイル)、ボーダフォンに継ぐ携帯キャリアでもある。

海底ケーブルの敷設作業。日本も高い技術力を持つ(GETTYIMAGES/KYODO NEWS)

 世界中の海底に沈められている海底ケーブルはおよそ380本。中には距離が短いとはいえ、存在さえも明らかにされていない軍事的なそれもあるが、敷設されている海底ケーブルの総延長は約120万キロ。およそ地球30周分の距離となる。

 海底ケーブルの世界に異変が起き始めたのはここ数年だ。データ通信の容量が増え続けるのに伴い、グーグルやフェイスブックといったコンテンツ業界の企業の投資が顕著になったのだ。両社の総延長は今や15万キロを超え、ここ数年の海底ケーブル投資の30%程度を両社で占めるほどだ。

 こうした企業ら以上の意欲と資金でこの世界を席巻しようとしているのが中国である。先に記した中国聯合通信、中国移動通信、中国電信(チャイナテレコム)はもちろんだが、この3社以上に米国が神経を尖らせたのが華為技術(ファーウェイ)だ。10年ほど前に英国との合弁会社を設立し、業界に参入する。昨年にはブラジルとカメルーンを結ぶ6000キロにもおよぶ海底ケーブルを完成させもした。欧米企業がそのシェア90%以上を占める海底ケーブルの世界でファーウェイは新参者であり、シェアも数%でしかない。けれども、その技術力は欧米が驚くほどに進歩を示しているという。それ以上に恐れられているのが、海底ケーブルには不可欠な陸揚げ基地局でのファーウェイの技術力である。欧米のそれを凌ぐとも言われている。

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