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2019年8月15日

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 「ダントツ経営」。これは競争相手より群を抜いて優れている企業を目指す、コマツが掲げる経営スローガンだ。昨年度には過去最高の売上高、営業利益を達成するなど、ここまで業績を拡大できたのは、ダントツを追い求める経営によるところが大きい。相手より少し上を行くくらいでは、すぐに追い付かれるため、圧倒的に先行するダントツを目指す必要がある。それを達成する上でポイントとなるのが、ビジネスモデルの変革だ。

坂根正弘(Masahiro Sakane) コマツ顧問
1941年生まれ。63年、大阪市立大学工学部卒業後、コマツに入社。90年、小松ドレッサーカンパニー(現コマツアメリカ)社長。2001年、コマツ代表取締役社長。07年、同代表取締役会長。13年、相談役。19年より現職。経団連副会長、経済産業省総合資源エネルギー調査会会長などを歴任。(写真・井上智幸)

 バブル崩壊とともに始まった平成の時代には、多くの日本企業が同業他社と同じビジネスモデルの中でシェア拡大競争や価格競争に陥り、体力を削っていった。コマツも例外ではなかった。私が社長に就任した2001年には800億円もの赤字を抱えていた。建設機械市場で世界のトップを走る米キャタピラー社の後を追い、自慢のモノづくり力で勝負してきたものの、固定費が膨らんでいた。

 事業の多角化や間接部門の肥大化などで膨れ上がった固定費を削るために、「一度限りの大手術」と決めてリストラを行ったが、成長のためには付加価値を継続的に生み出す必要があった。そこで掲げたのが「ダントツ経営」であり、ビジネスモデルの変革を進めた。

 今やコマツが販売し、稼働中のほぼ全ての建設機械に標準装備されている「KOMTRAX(コムトラックス)」が分かりやすい。これはGPSや通信システムを利用し、世界中のコマツ建機一台一台の位置や稼働状況、燃料の残量などがリアルタイムに所有者とコマツに伝達されるシステムだ。所有者は面倒な保守管理を効率化でき、コマツは各地での建設機械の稼働状況を知ることで、市場の景気動向把握も可能になる。このシステムが開発された90年代後半当時では画期的なシステムで、ビッグデータの先駆けともいえるのではないか。

 建機は高額な商品で盗難被害も世界各地で頻発していたが、このシステムにより所在が確認できることで、被害が激減することにもなった。

 こうして、建機の性能に加え、ネットワークでつなぐIoTという新たなビジネスモデルを生み出したことで、赤字を立て直して業績を拡大できた。その後、同業他社も類似の装置を採用してきているが、10~15年間の先行者アドバンテージは大きい。

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