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2019年7月11日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 2020年に創業100周年を迎えるマツダは、購入車の資産価値を重視する「愛車戦略」を掲げた生き残り作戦を展開している。

「アテンザ」から「マツダ6」へ

縮小市場ならではの生き方

 1980年代からバブル期にかけて、拡大路線を志向。一時期は販売チャンネルを5チャンネル有し、計2600店で年間59万台を販売してきた。しかし、90年のバブル崩壊以降は市場が縮小均衡期に突入。それに合わせるように一つの販売チャンネルに統合し販売店は940店まで減らした。昨年の国内販売台数は約21万台で、販売シェアが4%。このように市場自体が縮小する中で、どのような戦略を打つのか。キーワードは「愛車の資産価値維持」だ。

 2012年以降、商品の開発方法と売り方を大きく方向転換した。商品はエンジンや車体などセグメントを超えて一括企画することで、共通の開発方法や生産プロセスを実現。フルモデルチェンジを待たずに車種横断でほぼ同時期に常に新しい技術を採用することが可能となった。販売現場では、発売して年数が経過しても、古いことを理由に値下げをして販売する必要がなくなった。

 結果として新車購入後の残存価値が向上。中古車相場も併せて高くなったため、高水準の残価設定型クレジットを組むことが可能となった。

短期乗換を促進する

福原和幸(ふくはら・かずゆき)氏。1959年生まれ。81年マツダに入社、2005年京滋マツダ社長、11年国内営業本部長、15年から国内営業担当の常務執行役員。

 具体的には、すべての乗用車は購入から3年経過しても55%の残存価格で買い取ることを17年から保証している。トヨタ自動車や日産自動車など他社もこうした残価設定型クレジットは存在しているが、約20%~60%と車種や地域によってバラツキがある。マツダのように全車種一律で保証しているのは業界でも唯一だという。

 例えば、スポーツ多目的車(SUV)の「CX-5」(購入費320万円)を現金で購入して7年間乗り続けた場合の車検や消耗品を含めた費用総額は382万円。これに対してクレジットでこの車を購入して、3年ごとの車検前に新しい「CX-5」に乗り換えた場合の月々のクレジット支払いは4万4000円で済み7年間の支払合計は370万円。総支払額はほぼ同額で、常に最新の車に乗ることが可能となる(下取りの相場によって変動)。

 ただし、クレジットの支払い対象は価格の45%。購入時から3年経過時に同じ車に乗り続ける場合は残りの55%を支払わなければならない。あくまで買い方の選択肢のひとつだ。

 また、グループ内で保有している程度のよい中古車についても同様の、残価設定型クレジットが組めないか検討しているという。

 こうした取り組みが効果につながり、2010年と17年を比較すると、5年以内に車を買い替える顧客が1.6倍に増えた。これは、一定期間の自動車オーナー数が横ばいであったとしても、販売台数が増えることを意味する。国内販売担当の福原和幸常務は「車の全体需要が減っているのでシェアはあまり重要視しない。販売台数を少しずつ伸ばしていきたい。12年から取り組み始めたブランド戦略は軌道に乗ってきており、好感度も上昇している。これは30数年間国内営業を担当していて初めてのことだ」と手応えを感じている。

オーナーを重視

 しかし、世の中では車を所有する人が減る傾向があり、車を必要な時にだけ使うカー・シェアリングという利用形態が増えている。これに対して福原常務は「所有が大事だと思って、いまは車をご購入いただくこの方法を中心に設定している。将来的にシェアリングの需要が出てくれば対応する」と話し、当面はオーナーを重視する販売戦略を展開する方針だ。

 コーポレートビジョンでは「クルマをこよなく愛する」として「愛車精神」が強調されている。マツダ車を購入した顧客が同じブランド車を買う比率がどれくらいあるのかは不明だが、輸入車(プレミアムブランド)からの買い替えも増えているという。

 しかし、この方法が成り立って行くためには、最新の技術を開発、実用化し続けていかなければ、ほかのブランドの車に逃げられてしまう。自動運転やシェアリングが全盛期を迎えた時にマツダのこのブランド戦略が成功しているかどうか注目したい。

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