公立中学が挑む教育改革

2019年8月27日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。著書に『「目的思考」で学びが変わる 千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦』(ウェッジ)。

それは「麹町中だから」できるのでは? 千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長が進める改革を紹介する中で、たびたび寄せられる感想だ。先進的な設備と人的資源、そして予算に恵まれた東京都心の学校だからこそ、従来の常識にとらわれない改革を実行できるのではないか――と。公立中学の教育改革は、本当に「恵まれた地域」でなければ成し得ないものなのだろうか。この疑問の答えを探るべく、長野市立東部中学校を訪ねた。麹町中の取り組みにヒントを得て、2019年度から学年担任制(全員担任制)実施と家庭学習の見直しに動いた学校だ。

長野市立東部中学校

校長講話は、本当に生徒のためになるの?

 長野市立東部中学校の校長・北澤嘉孝氏が生徒たちに語りかける姿には、麹町中学校の工藤勇一校長と重なる部分がある。全校集会の校長講話ではパワーポイントを使ってスライド資料を見せながら、生徒へプレゼンテーションをする。

 「AI(人工知能)が進歩することで将来なくなってしまう職業は何だろう?」

 講話のテーマは多彩だ。会の後には生徒たちから感想を聞く。しかし同時に北澤氏は、こうした場が本当に必要なのか、疑問も持っていると話す。

 「最近は、校長が一方的に話す校長講話なんていらないんじゃないかという気がしています」

 根底にあるのは「生徒のためになるのか」という問いかけだ。自身にも教員にも、「それは何のためにやるの? 本当に生徒のためになるの?」と常に投げかける。ずっと公立校の教員畑を歩み、校長を務めるのは東部中学校が二度目。付き合いの長いかつての同僚や部下からは「昔から前例にこだわらないタイプだった」と評されている。

長野市立東部中学校・北澤嘉孝校長

 東部中学校の校長に就任して2年目となる2019年度、北澤氏は学校づくりの基本方針として「Look East Project」を立ち上げた。コンセプトは「Student First」(学習者本位)。生徒自身が思考し、判断し、表現する機会にあふれた学校を、そして生徒の自己肯定感を高める学校を目指している。

 これを実現するには、生徒一人ひとりと個別に向き合い、サポートする体制が必要となる。そこで北澤氏は従来の学級ごとの固定担任制を廃止し、学年担任制(全員担任制)を導入した。ヒントとなったのは麹町中学校の取り組みだった。

 「長野市の教育委員会は工藤校長の改革に興味を持っていて、教育長が私に『視察してみては』と勧めてくれたんです。そこで2018年9月に教務主任と学年主任を連れて麹町中学校を訪ねました。工藤校長のお話を聞く機会を得て、全員担任制という手段について本格的に検討を始めました」

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