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2019年8月28日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 ロシアのG7サミット(主要国首脳会議)への復帰がまたぞろ取りざたされはじめた。先週末、フランス・ビアリッツで開かれた首脳会合で、この問題が協議された。トランプ大統領が積極姿勢を見せたのに対し、欧州各国首脳が「時期尚早」として反対、議長のマクロン仏大統領は決定を見送った。

 ロシアがサミットを追放されたのは、ウクライナ・クリミア共和国を武力を背景に併合したことだった。 「力」によって北方領土をロシアに奪われた日本も、ウクライナと同様の状況に置かれているだけに、原則論ではロシア復帰に容易に賛成できない。

 ロシア自身は自らの復帰に否定的な見解を表明しているが、安倍首相が、賛成、反対いずれを決断するにしても、プーチン、トランプ両大統領との良好な係を維持したい思惑の一方、欧州各国の反対という板挟みにあって、苦しい判断を迫られそうだ。

(bopav/gettyimages)

「時期尚早」が大勢

 議長をつとめたマクロン仏大統領はサミット終了後の26日、この問題について、「新しいメンバーの出席は参加国が決めることで、全会一致でなければならない」と述べ、「クリミア問題が解決されれば復帰が実現する」と強調した。

 ロシアの復帰問題は、サミット初日、8月24日の夕食会で議論された。議論の具体的な内容は明らかにされておらず、安倍首相の対応も明らかではない。

 ブルームバーグ通信など海外メディによると、各首脳とも、ロシアとの関係再構築は重要としながらも、復帰は「時期尚早」という意見が大勢だったという。

 再招請に積極姿勢をみせているトランプ米大統領は夕食会翌日の25日、安倍首相、ジョンソン英首相らとの個別会談の冒頭、「ロシアの復帰を望む人はかなりいる。望まない人もいる」、「(自らが議長で来年、米国で開かれるサミットに)招待する可能性は十分にある」などと述べた。

 欧州連合(EU)のトゥスク大統領はサミット前、「ロシアの復帰はどんなことがあっても認めない。各国一致している。追放の理由はなお有効だ」と述べ、あくまでクリミア問題の解決が復帰の前提と強調。やはりサミットに先立って8月21日にベルリンで会談したジョンソン英首相とメルケル独首相も、時期尚早との認識で一致している。

 一方、ロシアのラブロフ外相は、こうした動きを受けて8月26日、「われわれは誰かに何かを頼んだりしたことはない。いかなる呼びかけもしておらず、今後もするつもりはない」と述べ、復帰に表向き冷ややかな反応をみせた。ただ、ぺスコフ大統領報道官は「招請があった時点で考慮する」と述べており、本音は明らかではない。

 ロシア復帰が議論されたのは、トランプ大統領が直前の8月20日、「ロシアを加えたG8の枠組みが、G7よりよほど適切だ。誰かが提案するなら好意的に考えたい」と述べたことがきっかけだった。トランプ氏は2018年6月、カナダ・シャルルボアでのサミットの際にも同様の主張を展開した経緯がある。

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