WEDGE REPORT

2019年9月4日

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 13年前に公開された地球温暖化対策を訴える映画『不都合な真実』は、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、大きな話題になった。地球温暖化問題の啓発に貢献したことから、映画の主人公を務めたアル・ゴア元米副大統領はノーベル平和賞も授与された。映画の中ではゴア元副大統領は非常に説得力のあるスピーチを行っている。映画公開後彼のスピーチを生で聞く機会があったが、それほど迫力はなかった。映画では上手な編集作業が行われているのだろう。

 映画の中で世界最大の島グリーンランドの氷河、氷床が全て溶融すると地球の海面が20フィート(6メートル)上昇する話題が登場する。環境省によると海面が1メートル上昇すれば、東京都の東部は海面下になるとされている。1.2メートルで米国東部の平野部も海面下になるらしい。6メートル上昇すれば、日本、世界の多くの都市は海面下になるだろう。かなりセンセーショナルだが、海面上昇がいつ起こるのか映画は触れていない。

(Dilok Klaisataporn/gettyimages)

中国が押さえるグリーンランドの資源

 温暖化が進むことでグリーンランドの氷が溶融すると、経済的には様々なメリットが出てくる。農業を行うことが可能になるし、原油、鉄鉱石、銅、金、ダイヤモンド、レアアースなど豊富にあるとされる鉱物資源の採掘が容易になる。既に、南東部において、金、ルビー、ピンクサファイアの採掘が数年前から開始されている。グリーンランドの近くにある国はカナダ、北欧、ロシアなど多いが、早くからグリーンランドの資源に目を付けていたのは中国だった。昨年1月には自称「北極圏近傍国家」として初の北極圏白書を発行した。

(PeterHermesFurian/gettyimages) 写真を拡大

 2009年、デンマーク領であるグリーンランドの自治権が拡大され、外交と防衛を除き、鉱業権を含めグリーンランド自治政府が権利を持つことになった。中国はその直後からグリーンランドの鉱物資源調査を行い、その後中国企業が鉄鉱石鉱山開発プロジェクトに関心を示した。さらに、現在は世界第2位の埋蔵量を持つとされるレアアース鉱山の開発に中国政府系企業が関与している。

 中国への対決姿勢を強めているトランプ大統領がグリーンランド購入意思を8月中旬に示したが、グリーンランドは自治領なのでデンマークが売却を決定するものではなく、グリーンランドの住民が帰属を決めることになる。デンマークの首相は「馬鹿げている」とコメントし、前首相は「エープリルフールの時期ではないけど」とコメントしたが、グリーンランド自治政府キム・キールセン首相も「グリーンランドは売り物ではないが、米国を含む他国との貿易、協力関係には開かれている」とコメントしている。

 グリーンランドの豊富な鉱物資源に目をつけ既に開発に乗り出している中国のさらなる進出を警戒するトランプ大統領が、グリーンランドを欲しがるのも無理はないかもしれないが、既にグリーンランドとの関係を深めつつある中国に追いつくのは簡単ではなさそうだ。

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