World Energy Watch

2019年6月13日

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 故堺屋太一氏が小説家としてデビューしたのは1975年に出版された『油断』だった。当時、日本は1次エネルギー(電気、都市ガスなどの二次エネルギーに加工される前のエネルギー資源)の4分の3以上を主として中東からの石油に依存しており、石油輸入が途絶した際の混乱した社会状況を描いた小説だった。

 実際に、日本は小説発表の2年前に発生した第一次オイルショックにより油が断たれるかもしれない危機を経験していた。親イスラエルとみなされた輸入国向け中東原油輸出中断の対象国に日本がなる可能性があったからだ。

(nightman1965/gettyimages)

 石油価格が4倍に上昇した第一次オイルショックを経験した日本を初めとする先進国は、エネルギー安全保障の強化を狙い、エネルギー供給源の多様化による安定化を図った。日本を含む多くの先進国が石油への依存度を下げるため取り組んだのが、石油の値上がりにより相対的価格競争力が増した石炭への燃料転換と原子力発電の本格導入だった。

 多くの国が石炭への燃料転換を進めたのは、価格以外にも理由があった。当時の石炭の輸出国は、北米、豪州と政治的に安定している国が中心であり、さらに、南アフリカ、ソ連、中国と供給地域が分散されていた。中東に輸出国が多く、石油輸出国機構(OPEC)が価格と生産量に影響力を行使する石油と大きく異なる点だった。

 フランスは原子力中心の電力供給体制実現に向け大きく舵を切ったが、米国、日本、ドイツなど多くの国も石油への依存度を下げるべく原子力導入を進めた。第1次オイルショックにより、新しいエネルギー源として、風力、太陽光、潮力などの再生可能エネルギーも大きな注目を浴びたが、本格的な導入は21世紀になってから始まり、エネルギー自給率向上に寄与することになった。

 エネルギーの多様化は進んだが、いま日本のエネルギー自給率は依然として10%にも達せず、米商工会議所による世界のエネルギー消費国上位25カ国のエネルギー安全保障ランキングでは、化石燃料輸入リスクにおいて日本は最下位になっている。25カ国が世界のエネルギー消費の80%を占めているので、日本のエネルギー安全保障は世界最低レベルと言える。

 しかも、日本のエネルギー輸入リスクは更に高まる可能性がある。原子力規制委員会による運転中の原子力発電所停止問題と世界の多くの金融機関、機関投資家が打ち出している石炭火力発電所への投融資中止の動きがリスクを高めるからだ。エネルギー安全保障は、国民生活にも産業にも大きな影響を与える。

日本のエネルギー安全保障

 石油に依存していた日本の電力、セメント、製紙会社などが、第1次オイルショック直後から採った戦略は、石油から石炭への燃料転換だった。石油に比較すると取り扱いと使用に手間が掛かる石炭を受け入れるため、石炭受け入れ基地の新設、石油ボイラーの石炭転換などが行われた。さらに、原子力発電所、液化天然ガス(LNG)発電所の建設も推進された。

 その結果、石油への依存度は2010年度には40%まで下落した。発電部門では石油火力の発電量の比率は大きく下落したが、それでも石油の比率が相対的に高いのは、自動車用の燃料としての需要が依然多いためだ。2010年度日本の1次エネルギー供給は、石油、石炭、LNG、原子力、再エネが、それぞれ40%、23%、18%、11%、8%担っていた。しかし、2011年の福島第一原発の事故以来原子力発電の比率が減少し一次エネルギーに占める石油を含む化石燃料比率が上昇している。

 2017年度には一次エネルギーにおける化石燃料の比率は、図-1が示すように、88%に上昇している。特に、80年代から本格導入が始まったLNG火力の稼働率上昇によりLNGのシェアが増加している。日本は石油とLNGの供給を中東に依存する比率が高いため地政学的なリスクも依然問題だ。

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