World Energy Watch

2019年6月13日

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日本のエネルギー安全保障をさらに弱体化させる要因は

 欧州投資銀行、欧州復興開発銀行などの国際金融機関と一部民間金融機関は、原則として石炭火力発電所建設への投融資を行わない方針だ。また、多くの機関投資家は石炭関連設備を保有する電力会社などへの投資を、気候変動問題への取組の観点から見合わせる、あるいは撤退する動きも見せている。いわゆるESG投資の視点だ。

 ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を意味しており、これらの点に配慮している企業への投資を行うことで、相対的に高い収益をあげることを目的としている。社会的に良い取り組みをしているとされる企業を育成し、結果高い収益をあげる考えだ。

 ESG投資の対象とならない企業は、タバコ、ギャンブル、アルコールなどに関与する企業だが、石炭資源あるいは石炭利用関連企業も二酸化炭素排出量が多く環境面から投資の対象として不適格とされることが増えてきた。

 石炭火力発電により二酸化炭素の排出量は増えるが、石炭火力のコストは、LNG火力、石油火力よりは歴史的に圧倒的に安く推移している。今年4月の輸入統計の金額から計算すると発電量1kWh当たりの燃料費は、石炭火力4.2円、LNG火力7.4円であり、石炭火力を二酸化炭素排出量の相対的に少ないLNG火力に切り替えた場合、それにより電気料金は上昇する。

 さらに、安全保障上の問題も生じる。豪州、インドネシアが供給の中心の石炭をLNGに切り替えれば、中東依存度は上昇する。エネルギー安全保障が脆弱な日本が、温暖化問題だけを考え石炭を他の燃料に切り替えることは簡単ではない。

 もう一つの問題は、現在稼働している原発が停止する問題だ。4月下旬に原子力規制委員会は、テロ対策設備が期限内に完成しない場合には現在稼働している原発を停止する考えを示した。テロ対策設備の有無が原発の安全性に与える影響は軽微としながらも、決めたことを変更することは規制の精神に反するとの規制委員会の考えと報道された。

 発電コストが安い既存の原発の停止は電気料金の引き上げに結び付く可能性があり、社会的な厚生を損なうことになるが(詳しくは、国際環境経済研究所の『規制は何のために行われるのか』をお読み戴きたい)、安全保障面でも問題が生じる。

 エネルギー選択に際しては、安全性を前提に環境性能、経済性、安全保障を考える必要があるが、現在の石炭火力と原子力に対する逆風は、日本のエネルギー安全保障を損なう可能性が高い。エネルギーの選択に際しては安全保障も大きな課題であることを再認識すべきだろう。

  
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