チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年2月24日

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日に2度の警察による戸別訪問

 一般のチベット人の住宅街においても、酷い地域では日に2度、警官が戸別訪問をしているともいう。外部へ逃れた者、外部と通じている者がいないか、を厳しくチェックするためだ。過去にも、チベット人からよく聞かれた表現だが、まさに今、「チベットは巨大な監獄」と化しているのである。

 こうした状況のまま、3月10日のラサ蜂起の日(1959年、ラサの市民らが中国当局の圧政に抗議するため蜂起し、ダライ・ラマ14世の亡命につながった事件の日)を迎えれば、さらに多くの血が流れることになりはしないか。世界中のチベット人、チベットサポーターは今、それを非常に強く危惧している。

 しかし、日本にいるわれわれは依然なすすべもなく、悲劇的なニュースに接するたび、ただ無力感を強くするばかりだ。在日チベット人と日本人支援者らによる、中国大使館等への抗議活動は行われているものの、前述のとおり政治は完全沈黙状態である。それどころか、永田町界隈や経済界には、こんな折にもなお、欲と二人連れの「日中友好」行事を麗々しくやることにしか関心のない人々が少なくない。

鳩山元首相の「親チベット派」発言はどこへ

 現在の民主党政権内には、野党時代に、「チベット問題を考える議員連盟」なるものを立ち上げた牧野聖修氏(経済産業副大臣)や、その議連の会長をも務めた枝野幸男経済産業大臣、さらには、彼らの後見人よろしく、ダライ・ラマ法王訪日のたび、夫妻で面会の場に出張っていた、元首相にして現・外交顧問の鳩山由紀夫氏まで、「われこそは親チベット派」というパフォーマンスに努めてきた政治家が大勢いる。

 かつて彼らは法王の前で、「政権を取った暁には、必ずやチベット問題の前進のため行動したい」との誓いの言葉など並べていたというが、これまた例によって、その言葉の軽きこと鳩の羽根のごとし、であろうか。鳩山氏は総理になった途端、態度を豹変させ、法王との面会を自粛し、チベット側との接触すら断ってしまった。

 一方、この件では、野党・自民党にも大いに失望させられている。昨年、東日本大震災の被災者を慰め、犠牲者への法要を執り行うため来日したダライ・ラマ法王のもとへは、安倍晋三元首相はじめ、自民党の保守派といわれる政治家らが多く参集した。このときに安倍氏は、日本の総理経験者として初めて法王に面会した人となったわけだが、目下のところ、テレビのバラエティ番組での発言のほかには、チベットの件について正式なコメントなど発していない。

本土600万、世界15万のチベット人は正月も祝えない

 他国の例を挙げても詮無いが、以前、当コラムでも書いたとおり、米国では政府国務省、有力議員らが中国政府に対する声明を出している。ヨーロッパ諸国も同様である。それでも、米国のチベット支援者らは苛立ちを隠さない。「私たちの政府(米国)は、毎度、毎度『中国さん、お止めなさいよ』と優しく口で諭すだけ。まったくの出来レース。実際に圧力をかけるようなことはけっしてしない。なぜなら、相手が中国だから」。

 先月25日の当コラムも書いたが、2月22日は、チベット暦の新年、ロサルの元日であった。ちなみに、チベット語で、「ロ」は年、「サル」は新しいという意味だ。日本語との共通点も多いチベット語だが、このように、形容詞+名詞の場合に語順が逆になるところは大きな相違点といえよう。当然、新年を「新年」という漢語(中国語)とも異なり、さらに漢語とは、主語+動詞+目的語といった基本文系の語順、声調の有無、文字と、何から何までが異なる。これだけを見ても、「有史以来、チベットは中国の一部であった」という共産党政府のプロパガンダには相当無理があると思わざるを得ない。

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