チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年2月24日

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 話を戻そう。ロサルを迎えた昨日来、インドや米国、欧州各国に住む亡命チベット人の友人、知人らと、いわゆる「新年メール」のやりとりをしたが、彼、彼女らからのメールには一様に、「チベット本土の状況を思えば、新年を祝う状況ではないけれど」という文言が書き添えられていた。本土のチベット人およそ600万人はむろんのこと、世界中に散らばる亡命チベット人およそ15万人もともに正月も祝えずにいるのである。

 鳩山由紀夫氏は、首相就任の際の施政方針演説で「命」という単語を連呼し、日本国首相であるにもかかわらず、その権限範囲をはるかに超えて、「世界の命」までをも守りたいと宣言した。よきに解釈すれば、国境や民族を超えた大いなる人類愛を謳い上げたということであろうが、その尊き精神は今まさに、チベットの現状に対して発揮され、具現されるべきではないのだろうか?

 一方、安倍晋三氏は、同じく首相就任の際の施政方針演説で「美しい国」という言葉を連呼した。伝統文化に彩られ、質実で、かつ慈愛にあふれ、気品と気骨ある国民精神の生きる美しい国へと、日本を甦らせようという宣言であったはずだ。このとき安倍氏の描いた「美しい国」が、チベット人たちの決死の訴えを看過するような、そんな日本であったはずはない。

 政治家にこういうことをいうのは、釈迦に説法だろうが、第二次大戦後の世界においては、「人権とは、国境・国家を超えて世界において等しく尊重されるべきもの」というのがコンセンサスである。こと人権問題に関しては、他国の介入もあり得、それは内政干渉にはあたらないということなのだ。同じ国際社会に生きる友人であればこそ、中国に対しても、はっきりともの言わなければならない場面がある。そのような場面で、政治家に勇気を与える、というのもわれわれ国民の大事な役目なのである。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信中国総局記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜

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